既報で蛇紋岩の結晶組織中に,機械的に遊離
ブルサ
イト(マグネシアに換算して原石の7~8%)を介在した,いわゆる
ブルサ
イト含有蛇紋岩が,高知市周辺にかなり広範囲にわたって埋蔵されていることを報告した。この遊離
ブルサ
イトを無加熱蛇紋岩から重炭酸で溶出する際の最適条件を求める目的で,水中に試料の粉末蛇紋岩を懸濁させ,種々の条件の下に一定圧の炭酸ガスを吹込み, 重炭酸によって溶出される遊離
ブルサ
イト中のマグネシア, ニッケル, 鉄および可溶性ケイ酸の溶出量を求めた。その結果蛇紋岩の粉末度は105μ前後で,かくはん下に反応させるとき,重炭酸化はほぼ1時間で完了し,含有遊離
ブルサ
イトのことごとくを溶出出来た。反応時間の各溶出成分量に対する影響については,反応を開始しても1時間までは時間とともに溶出マグネシア量は増大する。鉄,ニッケルめ溶出についても同様で,いずれも重炭酸塩化物形態である。更に重炭酸化に際して温度の影響を求めたところ,遊離
ブルサ
イト中の各可溶成分の溶出量は,50℃までは反応温度の上昇とともに直線的に増大し,この反応の律速段階は遊離
ブルサ
イトの重炭酸による溶解側にあることを知った。また, 400℃ から1000℃までの各段階にカ焼後, 前記溶出の最適条件を適用して重炭酸による各成分の溶出量を求めたところ,カ焼温度は650℃で最大溶出量に達し,マグネシアについては30%(蛇紋岩含有全マグネシア中) の溶出値が得られた。同時に鉄の溶出は無加熱の場合より減少し, 反対にニッケルおよび可溶性ケイ酸は増加する傾向にあり, 重炭酸溶液中における各溶出イオン間相互の挙動についても一知見を得た。
遊離
ブルサ
イトを含有していない蛇紋岩についても重炭酸化を行なったがほとんど各成分の溶出はなかった。以上要約して,蛇紋岩中に含有されている遊離
ブルサ
イトは,重炭酸による溶出の最適条件を適用すれば,無加熱のままで,そのことごとくを溶出し得るとともに,溶出液中には石灰分を含有しない特徴を有するため,今後の処理いかんでは高純度のマグネシアを得ることも可能と予想される。
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