独立リーグ球団が「大学」開設、選手も対象 慶応野球部出身の新社長

和田翔太
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 プロ野球独立リーグ・四国アイランドリーグplusの球団「香川オリーブガイナーズ」は6月、30代の新社長を迎え、新たな事業に次々と乗り出している。

 柱として掲げるのは教育事業だ。「社会のリーダーを輩出する」をコンセプトにしたオンライン講座「ガイナーズ大学」を9月に開設。起業を志す大学生や社会人のほか、独立リーグの選手も対象に、ビジネスで使える実践的な教育を提供している。

 福山敦士社長(34)は、今夏の甲子園で優勝した慶応高野球部出身。2年の時に投手として春の選抜大会に出場した。

 慶大卒業後はIT大手サイバーエージェントに入社。独立し、コンサルティング会社など複数の事業を立ち上げ、4度のM&Aを実行するなど卓越した経営手腕を買われ、ガイナーズに招かれた。

 球団経営は初めてだが、福山社長は「お願い型のスポンサービジネスでは、寄付してくれる企業を探し続けないといけない難しさがある。経営再建のためには、費用対効果を明確にしたビジネスモデルの構築が必要だ」と指摘する。

 自身も小学生の時から野球漬けの日々を送ってきた。野球に熱中するあまり、成長期の手前でハードな練習をやり過ぎて、けがで野球人生を断念してしまったり、「燃え尽き症候群」になったりしてしまう仲間たちを多く見てきた。

 教育事業に力を入れるのは、選手のセカンドキャリア支援として、引退後も野球で培ったリーダーシップを発揮し、社会を引っ張っていけるような人材を生み出したいと考えたからだ。入り口となる教育事業、出口となる職業紹介事業を確立することで、球団の収益の安定化にもつなげる。

 他にも、前職のコンサルで培った営業支援のノウハウを活用し、地元企業の集客や採用、マーケティング支援に参入する。これらの事業で培った人材やノウハウをスポンサーに還元することで「ウィンウィン」の関係を生み出し、継続的なスポンサー支援を確保することが狙いだ。2025年にはIPO(新規株式公開)も視野に入れる。

 球団経営はいま、岐路に立たされている。ガイナーズの22年の経常利益は前年比約9割減の59万円。経費を削って黒字を確保した格好だが、今年も厳しい決算が予想される。

 観客数も大幅に減っている。18年に611人だった1試合平均の観客数は、新型コロナウイルスの影響もあって22年には157人まで落ち込んだ。

 福山社長は「一刻も早く球団運営を安定化させ、地域が盛り上がるような仕掛けをしていきたい」と話している。(和田翔太)

〈香川オリーブガイナーズ球団株式会社〉四国アイランドリーグの分社化により、2006年3月に設立。球団はリーグチャンピオンに6回、独立リーグ日本一に3回輝いている。日本プロ野球機構(NPB)や海外への選手輩出実績は29人を誇り、独立リーグトップクラス。OBに福岡ソフトバンクホークスの又吉克樹投手らがいる。

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