大好きな花や虫を描いてきました。ずっと続けてきたことが誇りです。
「ふしぎの国のアリス」より
「日本のプチファーブル」と呼ばれ、2009年8月13日にご逝去された細密画家・熊田千佳慕(くまだちかぼ)さん(愛称・クマチカさん)の展覧会です。
熊田さんは1911年(明治44年)生まれ。戦前はグラフィックデザイナーとして活躍しましたが、戦後は一転して子供の本を中心とする作画活動に 入りました。うそやごまかしの無い、徹底した観察に基づいたリアルな技法は評判を呼び、絵本のみならず、花や虫、動物等を描いた図鑑、ファンタジーのシ リーズなど名作を次々に生み出しました。
筆の穂先数本のみを使って昆虫の細かい毛や、植物の葉脈一本一本にいたるまで丁寧に描かれた細密画の数々は、実物と見まごうほどの素晴らしさです。1枚の絵を描くのに、2ヶ月も3ヶ月もかけました。そのため多くの原稿料は稼げず、金銭的には苦しい生活が続きます。しかし「納得するまで描く」と、自らの信念に忠実に描き続けました。
現代社会でしきりと叫ばれる効率や合理化といった言葉・・・・・そういったものとは対極に位置する熊田さんですが、現代のような時代にこそ、その存在は逆に輝やきを増しているのではないでしょうか。
熊田さんは本展の開催を心待ちにし、出品作品の選定や会場構成、図録制作などに長らく取り組んでこられました。昆虫、植物、動物、ファンタジーの細密画など約200点の代表作をよりすぐった本展は、熊田芸術の集大成です。熊田さんの「最後のメッセージ」となった本展を是非ご覧下さい。
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