日本透析療法学会雑誌
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維持透析患者に合併した膀胱腫瘍の3例
大城 吉則与那覇 博隆謝花 政秀小田 正美比嘉 功小山 雄三秦野 直早川 正道大澤 炯
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1993 年 26 巻 3 号 p. 389-392

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抄録

維持透析患者に, 悪性腫瘍の合併率が高いことが指摘されている. とりわけ尿路系悪性腫瘍の合併率は高く, 今回我々は維持透析患者に合併した膀胱腫瘍を3症例経験したので報告する.
症例は, 全例男性で年齢は56歳から68歳で, 透析歴は2年から2年9か月であった. 膀胱腫瘍の発見の契機は, 全例肉眼的血尿で2例は下腹部痛も伴っていた. 2例は表在性腫瘍で経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-BT) を施行し, 現在再発なく生存中である. 1例は, 来院時にすでに周囲臓器への浸潤ならびに骨転移が認められた. 腫瘍よりの出血が強く, 出血をコントロールする目的で膀胱全摘除術を施行した. 術前の腹部CTで両側水腎水尿管が認められ, 原疾患に加え腫瘍による尿管の閉塞も腎機能の低下に関与していると推測されたため, 腎機能の回復を期待して尿管皮膚瘻も造設したが, 腎機能の回復は認められず術後80日目で悪液質死となった.
Matas以来, 維持透析患者に悪性腫瘍が多発していると国内外より報告されているが, とりわけ尿路系悪性腫瘍の合併率は高い. 尿路系悪性腫瘍は血尿で発見される症例が多く自尿のほとんどない透析患者は発見が遅れる傾向にあるものと予想される. 太田らは, 維持透析患者の透析導入初期に尿路系悪性腫瘍や子宮癌等が発見されることが多いと報告しているが, 末期腎不全の原因としてこれら腫瘍による下部尿路の閉塞も-因となっている可能性を示唆するものである.
以上より末期慢性腎不全および維持透析患者では下部尿路の悪性腫瘍の合併も常に念頭におき自尿のある患者では尿検査, 尿細胞診検査を, 自尿のない患者では膀胱洗浄尿細胞診検査や超音波検査等によるスクリーニングを行うことが望ましいと思われた.

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