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日めくりプロ野球10年8月

【8月12日】1982年(昭57) 上田利治監督、ああ勘違い 当て馬のつもりが…

 【阪急13―5近鉄】えっ、ピンチヒッター使っちゃダメなの?三塁側ベンチの上田利治監督は驚いたような顔をした後、ハッと気がつき色を失った。

 日生球場での近鉄後期6回戦。初回、阪急は先発の鈴木啓示投手を攻め、1死満塁のチャンスをつかんだ。打者は5番という好機だったが、打席に入ったのは投手の山沖之彦。指名打者制のパ・リーグで初回から投手がバットを持って打つことはまずあり得ないことだったが、上田監督の勘違いが招いた珍事だった。

 近鉄の先発を右か左か予想しかねた阪急は、5番DHに偵察メンバーとして登板予定のない山沖を入れた。右なら加藤英司内野手、左なら河村健一郎捕手を最初の打席で代打に送るつもりだった。

 ところが82年のシーズンから新ルールが採用されていた。「指名打者は相手の先発投手に対して少なくとも1度は打撃を完了しなければ交代できない」。この規定に従えば、DHでの当て馬は事実上不可能になった。

 代打を起用できない阪急は仕方なく山沖が打席に入った。プロ入り初打席の新人右腕は、鈴木の前に当然のごとく見逃し三振に終わった。「とにかく併殺打を打たないようにと思ってバットを握っていた。三振で良かったです」とホッとした様子。しかし、盛り上がった先制のムードはここでしぼみ、阪急は満塁の好機を生かせず、逆にその裏に近鉄に先制を許してしまった。

 「ワシの大失敗や。ルールはシーズン前に読んで知っていたはずやけど、スタメンを決める時にすっかり忘れていた。まったく面目ない」。頭をかいた上田監督だったが、この日はもう1度やってしまった。

 山沖に代わりDHに河村を入れたが、5回に四球で河村が出塁すると、代走に小林晋哉外野手を起用。その小林を5回裏の守備から、そのまま左翼に入れたため、DHが使えなくなり、先発投手の永本裕章投手が左翼で出場していた吉沢俊幸外野手に代わって2番に入ることになってしまった。

 これでとばっちりを受けたのが2番手投手の宮本四郎投手。8回に打席が回り、80年の大洋在籍時以来、2年ぶりにバットを持った。結果は左飛に終わったが「勘弁してくださいよ。もう怖くて」と苦笑いするしかなかった。

 阪急はこの時、首位日本ハムに4・5ゲーム差の2位。3位西武には0・5差に迫られていた。是が非でも勝ちたい上田監督の勝負に対する執着が失念させた、指名打者起用のルール。当て馬という野球独特の“選手起用”が制限されたのは、ファンの目線からしたら少々面白くないルール改正だった。

 

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