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米大統領:「16カ月内」軌道修正 イラク撤退計画

 【ワシントン及川正也】オバマ米大統領が27日、来年8月末までのイラク駐留米軍戦闘部隊の撤退を柱とする新戦略を発表したことで、03年3月に始まったイラク戦争は本格的な撤退局面に入る。しかし、大統領選で掲げた「就任後16カ月以内の撤退」は軌道修正を迫られ、来年夏以降の駐留部隊も最大5万人と膨張。厳しいイラクの政治、治安情勢を浮き彫りにした。米議会でも支持と懸念の声が交錯している。

 「イラクは安全ではなく、暴力も続き、将来に関する多くの政治問題が未解決だ」。オバマ大統領は27日に示したイラク戦争の終結に向けたシナリオで、イラクの治安、政治状況への懸念をこう強くにじませた。

 イラク戦争開戦に反対したオバマ大統領は就任翌日の先月21日、イラク駐留米軍の具体的な撤退計画の策定を指示。2月中旬までに、戦闘部隊の撤退期間について(1)16カ月(2)19カ月(3)23カ月--の3案が提示された。

 ゲーツ米国防長官の27日の記者会見によると、今年末か来年初めに行われるイラク国民議会選挙など「一連の選挙」について、駐留米軍のオディエルノ司令官が懸念を表明。16カ月以内の段階的撤退を行った場合、「選挙時期には十分な兵力を確保できなくなる」と判断した。また、23カ月以内とする案は「兵力が疲弊し、アフガニスタンへの追加派兵も必要」として見送られた。

 共和党内には「イラクの治安状況はまだもろい状態にある」(マクヒュー下院議員)など懸念がくすぶる。対テロ戦争には既に「1兆ドル近く」(オバマ大統領)が費やされ、経済低迷の中、国民の6割が膨大なコストに不満を示している。このため、オバマ政権にとってイラク撤退の成否は大きな正念場となる。

 共和党のマケイン上院議員は27日、「適切な計画」と評価したが、民主党のリード上院院内総務は最大5万人の駐留継続について「米兵とイラク民間人を守るだけの必要最小限の規模とすべきだ」と難色を示した。同党のペロシ下院議長も「2万人が適正」として5万人は「正当化」できないと指摘。与野党でねじれ現象も起こしている。背景には、大規模駐留による財政圧迫への懸念がある。

 オバマ大統領は共和党側に、治安状況によっては撤退計画の見直しもあり得ると約束しており、「ブッシュの戦争」の決別を促す民主党と大統領の間にすきま風が吹くおそれもある。

毎日新聞 2009年2月28日 11時54分(最終更新 2月28日 13時17分)

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