小松基地訴訟・騒音を放置していいのか

 基地の騒音は放置するしかないのか。受忍限度を超える騒音被害が発生していると認めながら、なぜ原因を除去するよう求めないのだろうか。
 航空自衛隊小松基地(石川県小松市)の騒音をめぐり、周辺住民ら約1580人が国に自衛隊機や米軍機の飛行差し止めと一人当たり120万円の慰謝料など損害賠償を求めた第三、第四次小松基地騒音訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は、国に損害賠償の支払いを命令したものの、飛行差し止めは認めなかった。
 損害賠償については一審判決より増額した計約11億8800万円の支払いを国に命じたが、将来の損害賠償請求については、権利保護の要件を欠く不適法な訴えとして却下された。
 基地周辺住民らが、「静かな空を返して」と訴えてきた自衛隊機の飛行差し止めについては、「防衛庁長官(防衛相)に委ねられた権限の行使の取り消しなどを含むため民事上の請求として不適法」と認めなかった。
 米軍機の飛行差し止めについては、「国は米軍の活動を規制できない」と請求を却下した。
 また、控訴審判決は、小松基地は「国防政策上、日本海側随一の基地施設として枢要な役割を付与されており、大規模災害への対応の役割も担っている」。さらには「自衛隊機の運航に必然的に伴う騒音は住民の受忍を義務付けるもの」とまで述べている。
 納得できるものではない。在日米軍基地の専用面積の75%を占める沖縄は、嘉手納と普天間に二つの飛行場を抱え、小松基地同様、周辺住民が数次にわたる爆音訴訟を提訴し、闘っている。
 「嘉手納、普天間の両基地は安全保障上重要な役割を担っている。運航に必然的に伴う騒音は住民の受忍を義務付ける」と言われているようなものだ。
 嘉手納町が実施した米軍嘉手納基地周辺の2006年度騒音測定調査で、最も騒音が激しい屋良地区で深夜から早朝にかけての騒音発生回数が過去最多を記録した。町に寄せられた苦情は、前年度より1・5倍も増え過去最高となった。
 日米が合意した騒音防止協定では、午後10時から翌朝午前6時まで「運用上必要とされるものに制限される」とされているのにこの状況だ。とても受忍できるものではない。
 基地の騒音をめぐる訴訟で国に損害賠償が命じられたことは、「欠陥空港」との烙印(らくいん)でもある。国には欠陥空港を改善する責務がある。だが、国が効果的な対策を実施しているようにはみえない。
 「静かな空を返せ」「静かな夜を返せ」の訴えは基地周辺住民の切実な願いだ。