ノーベル平和賞、フィリピンとロシアのジャーナリストに

Maria Ressa and Dmitry Muratov

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画像説明, ノーベル平和賞に選ばれたフィリピンのマリア・レッサ氏(左)とロシアのドミトリー・ムラトフ氏

ノルウェーのノーベル委員会は8日、2021年のノーベル平和賞を、フィリピンのジャーナリスト、マリア・レッサ氏(58)と、ロシアのリベラル紙「ノーヴァヤ・ガゼータ」編集長のドミトリー・ムラトフ氏に授与すると発表した。委員会は、レッサ氏とムラトフ氏がフィリピンとロシアでそれぞれ表現の自由を守るため「勇敢に闘った」ことをたたえた。

ノーベル委員会は、2人が表現の自由という「理想のために立ち上がるすべてのジャーナリストを代表する」存在だと述べた。

レッサ氏はフィリピンのネットメディア「ラップラー」の共同創設者。「母国フィリピンにおける権力乱用、暴力の行使、強権主義の拡大を、明るみに出すため」表現の自由を駆使したと評価された。

レッサ氏は、麻薬犯罪の取り締まりなどに強権的な姿勢を貫くロドリゴ・ドゥテルテ大統領を、批判的に報道し続けてきた。

ロシアのムラトフ氏についてノーベル委員会は、「ノーヴァヤ・ガゼータ」を創刊し、24年にわたり編集長として、国内状況の悪化にもかかわらず言論の自由を守り続けてきたとたたえた。

受賞についてレッサ氏は、ラップラーによる生中継で、「ショックを受けている」と話した。また、自分の受賞は、「事実がなければ何もできないし(中略)事実のない世界は真実と信用のない世界だ」と表していると述べた。

ムラトフ氏はメッセージアプリ「テレグラム」のチャンネル「Podyom」の取材で、「笑っている。全く予想していなかったのでおかしい」と話し、この賞は「現在、抑圧されているロシアのジャーナリズムを報いるものだ」と述べた。

ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は受賞を称賛。「常に自分の理想に従い、こだわって仕事し続ける。理想に自らを捧げている。有能で勇敢だ」とペスコフ氏は述べた。

ノーベル委員会は2人の選考理由として、「自由で独立して事実に立脚したジャーナリズムは、権力の乱用やうそ、戦争プロパガンダに対して我々を守ってくれる」、「表現の自由と報道の自由がなければ、国同士の友愛や軍縮の推進を成功させるのは難しく、今よりも良い世界秩序をこの時代に成功させることも難しい」と説明した。

今年の平和賞は計329候補の中から選ばれた。賞金は1000万スウェーデンクローナ(約1億2600万円)。