日南学園 試合終了の瞬間、寺原が待ち望んだ横浜との対決が決まった。「抽選が終わった時には『やったぁ』と思った。打つ方も投げる方もいいので、楽しみです」。試合は片田―片山の完封リレー。16日の2回戦(玉野光南)で熱を押してマウンドに登った怪物クンも、何よりの休養になった。
5回からはブルペンに立った。肩を慣らした後、捕手を座らせて20球。前日は病院で点滴を受けたが、熱も平熱に戻り「コンディションは不安がないくらいになりました。ブルペンもいつもと変わらなかったです」。今大会最高の5万人の観客も、試合そっちのけで一塁側ブルペンへ熱視線を送った。
今日の準々決勝では、ナインの気持ちにこたえる。この日、先発・片田は、同級生が「寺原組」と呼ぶ仲良しメンバーの1人。その片田は「寺原をちょっとでも休ませればと思った。まっすぐが走らなかったけど、コントロール重視で投げた」と、初の甲子園のマウンドで7回を4安打無失点。2番手の片山も2回を無安打で締めくくった。「2人とも頼もしく思いました。初回に先制してから、もう今日は大丈夫だと思いました」と寺原も称賛の言葉を送った。
気持ちも入れ替えた。初めての長期遠征。体調不良も宿舎のエアコンの切り忘れと、自己管理に甘さが出た。2回戦の翌日、小川茂仁監督(54)から「おまえは宮崎のエースになるのか、九州のエースになるのか、日本のエースになるのか。甲子園に来ておまえの生活はバラバラだ。髪を刈ってこい」。即座にバリカンで自ら七分刈りにカット。最速記録を封印して、勝利を優先する姿勢を表した。
本抽選前から対戦を熱望していた横浜との対戦。エースの自覚に目覚めた怪物くんは「自分の持っているすべてを出したい。2人に負けないように自分も0点で抑えたい」と無失点宣言だ。寺原が、名門・横浜を倒して全国制覇へ勢いを増す。【村田義治】
(写真=2回表の攻撃が終わり、日南学園の寺原(後方)は中原捕手の防具つけを手伝う)
■20安打15点
3番の井手が、5打数4安打と大暴れした。今夏甲子園で3試合で12打数10安打。「体が開かないように心がけているのがいい結果になっているんだと思います」。この日、チームも20安打15得点の大爆発。打率8割3分3厘の井手は「次の横浜戦もこの調子で頑張りたいです」。
日南学園・片山光喜投手(3年)〈2回を無安打無失点に抑え〉「直球で押せる本来の投球ができた。横浜戦でも投げたいです」
◆宮崎最多得点 宮崎県勢の15得点は、57年1回戦の大宮14―1三国を上回る最多得点。同県の8強は、93年の小林西以来。
アン2失点
東洋大姫路 ベトナム国籍の1年生投手アンが力尽きた。今大会2度目の先発も、初回2死から3連打で2点を失った。その後無失点に抑えたが、3回1死二塁で中軸を迎えたところで無念の途中降板。ベンチ前のキャッチボール中に大粒の涙を流した。「調子は悪くなかった。自分の力を出し尽くしたけど、相手のレベルが違い過ぎました」と脱帽。「最終的には全国制覇が目標。あと2年間、球種を増やしてまた戻ってきたい」と力強く語った。
◆26年ぶり無得点 兵庫県勢の完封負けは75年2回戦の秋田商9―0洲本以来。
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