結婚しても姓が変わらない「夫婦別姓」を選択できる制度を求め、東証1部上場のソフトウエア会社「サイボウズ」(東京)の青野慶久社長(46)らが9日、東京地裁に提訴する。最高裁が夫婦同姓を「合憲」と判断してから約2年。青野氏は取材に対し、「多様な個性を認める社会に変えたい」と裁判の意義を訴えている。
訴訟では、外国人と結婚した日本人は戸籍法に基づき夫婦別姓か同姓を選べるのに対し、日本人同士では認められないのは法の下の平等を定めた憲法に反するなどと主張する。
青野社長は1997年にサイボウズを起業し、東証マザーズ上場を果たした翌年の2001年に結婚。「プライベートの名前が一つ増える感覚」で戸籍上は妻の姓に変えたが、仕事で旧姓の「青野」を使い続けたところ、予想していなかったストレスを感じたという。
出張時は改姓したパスポートに合わせた航空券やホテルの手配が必要で、契約書の署名も、どちらの姓で書くべきか確認する。登記簿など旧姓を併記できる公的文書は増えたが、「法的には『青野』ではないので、どこまで使って良いのか分からない」と頭を悩ませる。
最高裁は15年12月、夫婦同姓を定めた民法の規定は憲法に反しないと判断した上で、制度の在り方を「国会での議論」に委ねた。その後、最高裁が判決文での使用を認めるなど、旧姓を容認する動きが進むが、「法的根拠のない名前がどんどん使われ、社会が不安定な方向に向かっているのでは」とも感じる。
「旧姓との使い分けに日々無駄なコストを払うのは社会全体にとっても非効率。法的根拠を与えればそれだけで済む」。旧姓使用を認める規定を戸籍法に追加するのが訴訟の目的といい、「同姓でいたい人、別姓でいたい人。互いを認め、共存できる社会をつくりたい」と話した。(2018/01/06-14:18)
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