日めくりプロ野球09年4月
【4月5日】1958年(昭33) 明暗クッキリ 長嶋の同級生杉浦忠 大量援護でプロ初勝利
地を這うような腕の位置から、ボールが手元でホップするような感覚のストレートを打者に投げ込んだ杉浦。血行障害をわずらってからはリリーフエースとして活路を見出した
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【南海15−2東映】後楽園でスーパールーキー、巨人・長嶋茂雄三塁手が国鉄・金田正一投手の前に手も足も出ず、キリキリ舞いさせられている頃、同じ東京の駒沢球場では、長嶋と立教大同期のアンダーハンド、南海・杉浦忠投手が新人ながら東映(現日本ハム)との開幕戦の先発投手を任されていた。
今でも立大史上最高の36勝を手土産にホークス入り。11年連続開幕戦勝利中の鶴岡一人監督は、同じ東京六大学出身(鶴岡監督は法政)の杉浦をことのほか高評価していた。「怖いもの知らずの坊やがどこまで度胸があるか、使ってみようやないか」という“ツルの一声”で開幕投手は決まった。
黒ブチメガネをかけてピンチでもポーカーフェイス。モーションの大きい下手からの投球で走者が二盗、三盗しても三振を奪って得点を与えない投球が身上だが、さすがにプロ初登板が開幕戦の先発。神宮でのマウンドのようにはいかなかった。
初回、1番ジャック・ラドラ中堅手を四球で歩かせると、2番松岡雅俊二塁手の初球に二盗を許した。「すっかり上がってしまって、抑えがきかなかった」という杉浦は制球に苦しみ、真ん中高めに置きにいったストレートを松岡に中前に弾き返され、1点の援護点もすぐはき出してしまった。
2回も先頭の吉田勝人豊左翼手を歩かせると、日系二世助っ人スタンレー・橋本一塁手に中越え三塁打を浴び、勝ち越しを許した。精彩を欠く杉浦を交代させるかに見えたが、鶴岡監督は耐えた。「その辺の新人とはモノが違うんや。スギは南海を背負って立つ投手。ここで代えたら自信をなくすだけや。必ず試合の途中で修正する。黙って見とれ」。柚木進投手コーチの心配顔をよそに鶴岡親分は続投させた。
勝てる投手というのは不思議と援護があるものだ。南海は3回、東映の先発牧野伸投手を攻め、東映野手陣の守備の破綻も手伝い一挙8点が入った。これで杉浦は冷静さを取り戻し、以後7回まで無失点。得意のシュートに加え、終盤にはシンカーやスクリューボールを試すなど余裕をみせ5安打4奪三振でプロ初勝利を挙げた。
鶴岡監督の読み通り、1勝したことで自信をつけた杉浦は、5月7日の西鉄2回戦(大阪)で黒星が付くまで6連勝。シーズン27勝12敗で、前年の木村保投手に続き、南海は2年連続して新人王を輩出。1年目でエースとなった杉浦は、翌59年の南海日本一の立役者へと一気に栄光の階段を駆け上っていった。
通算187勝。右腕の血行障害なければ、軽く200勝はしたであろう杉浦は開幕戦先発は4回と思いのほか少ない。成績は3勝1敗だが、優勝した59年の大毎(現ロッテ)との開幕戦も7安打4失点と前年同様好投したわけではなく、10点を取った打線に援護されて付いた白星だった。
この年38勝4敗と驚異的な勝率9割5厘というとんでもない数字を残した杉浦だが、開幕戦で1勝しなければ、どうなっていたか。打線が投手を育てるという球界の格言がこの杉浦にも当てはまっていた。
1958年4月5日 | 東映−南海1回戦 | 駒沢 | 南海1勝 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
計 |
|
南 海 | 1 |
0 |
8 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
5 |
15 |
東 映 | 1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
投 手 | |
南 海 | ○杉浦(1勝)、舛井−野村 |
東 映 | ●牧野(1敗)、西田、山本義−山本八 |
本塁打 | 岡本1号(南) |
三塁打 | 広瀬、穴吹(南)橋本(映) |
二塁打 | 野村、森下、広瀬(南)石原(映) |
南 海 15安打8三振7四死球 1盗塁2失策7残塁 | |
東 映 7安打5三振3四死球 1盗塁3失策8残塁 | |
球審・二出川 試合時間2時間23分 観衆1万8000人 |
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