発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria, PNH)合併妊娠では溶血の増悪に伴う血栓症のリスクが高く,母体死亡,流産,未熟児の頻度も高い。Eculizumabは妊娠合併症のリスクを軽減させることが報告されてきており,特発性造血障害に関する調査研究班による「PNH妊娠の参照ガイド」では非導入例は妊娠初期以後のeculizumabの導入が,既に導入されている場合はその継続が推奨されている。今回,輸血非依存だが時に溶血発作を認める31歳女性のPNH患者に対し,稽留流産後にeculizumabを導入したところ,自然妊娠が速やかに成立した。妊娠中,溶血発作や血栓症などの合併症は認めず,抗凝固薬の併用をせずに安全に出産でき胎児も正常であった。産褥期は血栓のリスクが高いため,分娩後6週間ヘパリン投与を行ったが,産褥期も合併症を認めなかった。PNHは希少疾患でありその中でも妊娠出産例はさらに少ない。今後も症例を蓄積し,参照ガイドの整合性を検証していくことが重要である。
61歳,女性.骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)の治療中に認知機能障害をはじめとする中枢神経症状が出現した.頭部MRI(magnetic resonance imaging)検査では大脳白質に病変が多発しており,臨床的に進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy:PML)が疑われた.神経症状出現から62日目に死亡し,病理解剖で脳を含む全身の末梢血管への芽球充満と臓器への芽球浸潤を認め,死因は多臓器不全と診断された.脳脊髄液のPCR(polymerase chain reaction)検査でJCウイルスDNA(deoxyribonucleic acid)は検出されなかった.PMLと思われた病変は,大脳白質内末梢血管への芽球充満を原因とする循環障害による微小軟化と考えられ,稀な病態を確認できたので報告する.
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