表現の自由と納本拒絶 | 富山県射水市の“広報書士”【ひばり行政書士事務所】

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日本では、出版社が本を出したら、国会図書館に納本しなければいけないというルールがあるのをご存じでしょうか?

納本しないと罰則がある代わりに、納本するとお金がもらえます。

この「納本制度」の隙を突いた、奇妙な事件がありました。

JRRC(公益社団法人日本複製権センター)のメルマガで、理事長の半田正夫先生が紹介されていました。


それによると、『亜書』という本があるそうです。
著者はアレクサンドル・ミヤコフスキー。
出版社は「りすの書房」。
1冊480頁。定価は64,800円。しかも、全132巻からなる大著なのです。
内、78巻がすでに国会図書館に納本されたため、代償金として136万円が支払われたとのことです。

ところがこのアレクサンドル・ミヤコフスキーさん、実は架空の人物です。
しかも本の内容は、「ギリシャ文字等をアトランダムに並べたもの」、すなわち読めない、読む意味のない本です。

「これが代償金目当ての新手の詐欺ではないかとマスコミでたたかれ、大騒ぎとなっている」という記事でした。


これに対して、半田先生のご意見は、

 だが、同法25条1項をよく読めば、「文化財の蓄積及びその利用に資するため」納入しなければならないということが明記されており、この目的に合致しない本書の類は同法にいう「出版物」に該当しないと解すべきで、はじめから納入を拒否すべき対象ではなかったかと思われるのである。
 最近の新聞報道では、国会図書館はすでに支払った代償金の返還を求めたとのことである。そのことは当然であるにしても、なぜ代償金を支払う前に国会図書館が収納すべき「出版物」か否かをチェックできなかったのかと疑問の残るところではある。

というものでした。


確かに一理ありますが、私としてはちょっと違和感があります。

国会図書館が、納本されてくる全ての本をチェックするのは大変です。
しかし代償金を払う以上、チェックしなければいけない、という意見も分かります。

ただ、表現の自由から考えると、たとえ「ギリシャ文字等をアトランダムに並べたもの」であっても、いちがいに「出版物でない」と拒絶すべきといえるかどうかは、疑問なのです。

その前に、出版社に連絡し、「これでは代償金を支払えないけれども、異議はありますか?」と弁明の機会を与えてから、決定すべきだと考えます。

そうでないと、出版物であるかいなかの判断を国会図書館が担うことになり、下手をすると検閲につながりかねないという心配があります。

ですから、

チェック
拒絶の判定
弁明の機会
拒絶決定

と、ワンクッション置くべきだと思います。


結論としては変わらないかもしれませんが、憲法の原理でも極めて重要な「表現の自由」にかかわることですから、プロセスも慎重にすべきと考えます。


専門的な話になってしまいましたが、いかがでしょうか?



言葉の事務所ひばり 仙波芳一
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