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【正論】屋山太郎 消費税の前に公務員改革がある

2009.1.9 02:54
このニュースのトピックス国会

 ≪初志を忘れた麻生首相≫

 麻生太郎首相は来年度予算案作成を前に「3年後には消費税をお願いしたい」と強調した。責任政党の首相として、国民に厳しいこともいわねばならないという意気を示したつもりだろう。しかしその前に国民に果たさねばならない大きな任務を負っていることを自覚すべきだ。

 首相は組閣後、初の記者会見では「大胆な行政改革をやり、経済情勢が許すなら、3年後には消費税をお願いしたい」と述べた。今回の首相発言では前段の条件が省かれている。歴代内閣は大胆な行政改革を公約してきたが、不可能だった。天下り法人は役所の人事の延長線上に位置づけられており、省くわけにはいかないのである。衆院調査局の調査によると、天下り法人は4600。そこに天下っている元官僚は2万8000人、そこに流れる資金は12兆6000億円に達する。

 企業が官僚を受け入れるのは談合や受注に都合が良いからで、日本ほど官僚がらみの談合の多い先進国はない。経済活動や社会活動を不健全にしているのが日本の天下りシステムだ。

 ≪“社会悪”根絶のために≫

 安倍晋三氏はこの“社会悪”の根絶には公務員制度を変えるしかないと国家公務員法の改正を断行した。これを引き継いだ福田内閣で渡辺喜美行革相が「公務員制度改革基本法」を成立させた。現在、この基本法に基づいて(1)公務員の定年延長(肩たたきをなくす)(2)各省の幹部人事の「内閣人事局」への一元化−を骨子とする法案作成作業が公務員制度改革推進本部(本部長=首相)で進められている。

 中川秀直元幹事長は特別会計などの「埋蔵金」が50兆円あると主張した。財務省脱藩官僚の高橋洋一氏も「20兆、30兆円はあるだろう」という。与謝野馨経済財政相は財務省のまわし者よろしく「絶対にない」と断言していたが、超大型予算を組むに当たって財務省は手品のように何十兆円も出してきた。

 公務員制度改革はこの埋蔵金のような小さな一時的なものではない。麻生首相は「官僚は使うもの」「省益でなく国益を追求させよ」と号令した。しかし地方交付税1兆円、地方整備局、農政局の原則廃止など首相の指示はことごとく無視され、はね返された。官僚はポストを減らさず、自省の予算がふえることのみを目指す。

 麻生政治はシーリング(上限)を取っ払い、赤字国債の発行を抑えるという財政節度をも踏みにじった。100年に1度の非常事態だというからこの判断は認めよう。しかしいくら非常時でも公務員制度改革を骨抜きにする理由にはならない。首相が「3年後の増税」をいうなら、その前提に「公務員制度改革の完遂」がなければならない。

 社会保障を手厚くすれば大きな政府は不可避だ。しかしその政府は効率的でなければならない。

 国民はそこら中に無駄や談合、天下り法人がはびこっていることを知っているからこそ、増税に忌避反応を示すのだ。無駄や不正、不法排除の決め手こそが公務員制度改革だと首相は強く認識すべきだ。首相がリーダーシップを発揮できない官僚制度は憲法の趣旨である議院内閣制にも著しく反する。

 ≪官僚の手に委ねる安直≫

 首相はこの公務員制度改革を甘利明行革相に丸投げした。改革推進本部には顧問会議が設けられたが、本部事務局はこの顧問会議には座長も置かず、報告や答申も求めない方針だった。官僚が改革案を作って事後承諾を求めようとの魂胆だった。これには顧問会議が反発し、御手洗冨士夫日本経団連会長を座長に選出すると共に、桜井正光経済同友会代表幹事をワーキング・グループの主査として、1カ月に8回の会議を開いて突貫工事を行った。

 締め切りだとされた昨年11月半ばに「中間報告」を出したところ、甘利氏は“政治判断”で締め切りを今年3月まで延ばした。当然、中間報告の内容を詰める作業は続行されなければならない。しかし甘利氏は「作業は事務方で詰める」という。115年ぶりの官僚改革を官僚の手に委ねるというのは正気の沙汰(さた)ではない。まな板の鯉に包丁を握らせて自分で捌(さば)けというのに等しい。

 この馬鹿げた方針に顧問である総務省のOB、労働省OBが賛同した。加えて顧問の高木剛連合会長はスト権問題が片付かなければ人事院には手を触れさせないという。立法府の意志(基本法)はスト権も含めて解決することを求めている。連合と人事院が手を組み、全官僚がOBもグルになって、現状を墨守しようという。麻生氏は問題の本質を理解せず、甘利氏は逃げている。これでは日本は救われない。(政治評論家 ややま たろう)

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