Dr.えんどこの「皮膚とココロにやさしい話」
医療・健康・介護のコラム
赤ちゃんの蒙古斑 海外では虐待と勘違いされることも
こんにちは。皮膚科医のえんどこです。前回の記事は予想以上の反響をいただきびっくりしましたが、今回からは、またいつもの文章に戻ります。肩の力を抜いてお読みくださればと思います。
皮膚科外来では年齢層に応じた発疹の訴え
皮膚科の外来には、赤ちゃんからお年寄りまで、本当に幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃいます。「発疹がかゆい」「何も出ていないけど、ひたすらかゆい」「痛みをともなう発疹が出てきた」「最近、顔面に発疹が出てきて徐々に大きくなってきた」など、患者さんのおっしゃることは様々です。
発疹というのは、当然ながら何歳になってもみられます。赤ちゃんのおむつかぶれに始まり、小学生のとびひ(伝染性 膿痂疹 )、中年以降であれば顔のシミ、高齢者の皮膚がんなど、お子さんにできやすい発疹もあれば、高齢者に特有の発疹など、その年齢層によって見られやすい発疹が異なっているので、それぞれに丁寧に対応することが、我々皮膚科医の務めといえます。
今回は、赤ちゃんに見られる「あざ」について書きたいと思います。あざには、赤あざ、青あざなどと呼ばれるものがありますが、実を言うと、単純に色が違うだけではありません。赤あざは医学用語では血管腫と呼ばれ、皮膚の血管が増生し、赤血球のもつヘモグロビンのために赤くみえます。
青あざは蒙古斑や太田母斑
青あざには、 蒙古 斑や 太田母斑 などがあり、メラノサイトという色素(メラニン)を作る細胞が真皮という皮膚の少し深いところに存在しているために青くみえます。蒙古斑は、英語ではモンゴリアンスポットと表記され、黄色人種(主にアジア人)、アメリカ先住民、ヒスパニック系などの腰部~臀 部に見られる身体的特徴の一つです。反面、白人にはほとんど見られないこともあってか、アメリカではかつて虐待によるものと誤解され、赤ちゃんが国の施設に保護されてしまったという出来事もあったようです(もちろん間違いとわかり、赤ちゃんは無事両親の元にかえされたようですが)。
日本人を含む黄色人種の赤ちゃんでは、そのほとんどに見られますし、年を重ねるごとに自然に消えていくこともわかっているので、少なくとも自分の周りでは蒙古斑を心配している人は見たことがありません。それほど、われわれ黄色人種では、蒙古斑はあって当たり前のものなんだということがよくわかります。
もちろん背中や手背、足首といった典型的な部位以外に見られ、なかなか消えないような蒙古斑(この場合は異所性蒙古斑といいます)もありますが、それでも決して珍しいというものではありません。
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