ゲーム脳、言われているのは日本だけ東京大学大学院情報学環教授 馬場章氏インタビュー 後編(1/2 ページ)

前編において、医療的効果や教育的効果はもちろん、人格形成にも利用できることが判明した「シリアスゲーム」。とは言え、「ネット中毒」や「ゲーム脳」など、ゲームのマイナス面があるのも確かだ。これらの問題は、どのように捉えていくべきなのだろうか?

» 2005年06月01日 13時30分 公開
[遠藤学,ITmedia]

 前編では、シリアスゲームを通して人格形成までもが可能となる、と述べた東京大学教授の馬場章氏。だが、ゲームによる人格形成と言われると、巷で騒がれるようなゲームに関連した(させた)事件を思い出してしまうのも仕方のないことだろう。

 現在、ゲームにつきまとうマイナスイメージの代表格としては「ネット中毒」や「ゲーム脳」といったものが挙がると思うが、こういった問題に対して同氏はどのように捉えているのだろうか?

photo 馬場章氏
東京大学大学院情報学環教授。専門はコンテンツ創造科学、歴史情報論、デジタルアーカイブ学。ゲームの面白さの解明を軸にシリアスゲーム研究を提唱するだけでなく、それを構造化したゲーム制作にも取り組む

アメリカでも曖昧なネット中毒の定義

ITmedia ゲームが人格形成に使えるというのは分かったのですが、その反面でネット中毒などマイナス要素もあると思います。

馬場 それはもちろんそういう事例もあります。というか、なければおかしいんですよ。任侠映画で有名な深作欣二監督がいましたが、映画館で彼の映画を見ると、中には肩をいからせながら出てくる人がいる。これは視覚的な影響を受けているからなんです。映画というのは一方向ですが、受身に鑑賞するだけでもそういった影響がある。

 一方、ゲームというのは双方向的なものですよね? こちらから入力をして、向こうから何らかのリアクションが戻ってくる、そしてまたこちらから入力するというように、ゲームプレイは双方向です。一方向の映画ですら観客に影響があるのなら、双方向のゲームにもプレイヤーに影響があって当たり前なんです。

photo 見るだけでなく、考え、入力するという動作が加わるのがゲーム。良い悪いに関わらず、プレイヤーに影響を与えるのは当然と言えるだろう

 とは言え、これまでゲームは悪い影響ばかりにスポットが当たっていた。その端的な例がゲーム脳やネット中毒になると思います。確かにネット中毒にはそれなりの実証研究があります。ただ問題なのは「中毒」というのは医学用語ですから、どういう症状が出るのか、それに対する処方せんは何なのかを、きちんと定義する必要があるんです。

 ネット中毒に関しては、アメリカに研究者が何人もいるんですが、基準がバラバラ。簡単なのは10項目の質問をして、半分以上当てはまればネット中毒といった診断がありますが、私ですら当てはまってしまう、当てにならないものです。ですから、ネット中毒をきちんと医学的に定義して、それに当てはまる人には医学的な治療を積極的にしなくてはならない。

 実際の症例研究ではないのですが、私の統計的な研究によると、本当にネット中毒に陥る可能性のある人は、日本人のオンラインゲームプレイヤーの中の0.5%。ですから、実際にネット中毒で、医学的な治療が必要な人はもっと少ないはずなんです。

羽生名人もゲーム脳?

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2406/01/news001.jpg 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  2. /nl/articles/2406/04/news101.jpg 「日本の車のスゴさ」 ヒロミ、45年前の“激レア旧車”を発掘&オークション出品 驚きの落札価格にスタジオ騒然「こんなことあるんだ!」「ヤバイな!」
  3. /nl/articles/2406/04/news121.jpg 「1本11万!」 大谷翔平と真美子さんが監督へ贈った誕生日プレゼントに注目「もしかしてこれ?」「ウイスキーじゃないかも?」
  4. /nl/articles/2406/02/news013.jpg 「ご覧の通り、ひどい有様です」 ハードオフに1080円で売っていた“信じがたい状態の商品”に「どうして……」
  5. /nl/articles/2406/04/news134.jpg 笠井信輔アナ、妻とのレアな2ショット公開 「奥さま美しいですね」「美魔女 すてきすぎるーぅ」と反響
  6. /nl/articles/2406/03/news049.jpg 70代両親「もう猫は飼わない」と決めていたが、家をなくしたシニア猫を引き取り…… 2カ月後の変化に「泣けてくる」
  7. /nl/articles/2406/04/news024.jpg ぐずぐず泣きの2歳息子に、柴犬がぴったり寄り添うと…… 優しさが生んだ奇跡に「ワンコって本当に愛情深い」「二人にだけ通じる何かがあるのかな」
  8. /nl/articles/2406/03/news022.jpg 縁日の屋台に紛れ込んだ“超巨大金魚”にア然 金魚すくいの常識をブッ壊す光景に「やべぇw」「こんな豪華な金魚すくい見た事ない」
  9. /nl/articles/2406/03/news083.jpg 「もはやデカいイオン」「マジ建築物」と驚きの声 港に停まる“デカすぎる船”に目がバグりそう
  10. /nl/articles/2405/31/news066.jpg 実家の親のために作った「ネットにつながらなくなったら開ける箱」が話題 ルータ再起動の簡略化に「すばらしい解決方法」「マネしたい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  2. 釣り人が捨てたフグを保護→ありえない量のエビを与えたら…… 笑いと驚きの結果が反響を呼ぶ「大笑いしてしまいました」
  3. 「ご覧の通り、ひどい有様です」 ハードオフに1080円で売っていた“信じがたい状態の商品”に「どうして……」
  4. 24歳人気女優、愛車の大型バイク&金髪ショットを番組で紹介 共演者驚き「街で会っても分からない」
  5. 【今日の計算】「7−7×7+7」を計算せよ
  6. 彼女が「ほんまやめて」と嘆く“彼氏の撮影”が1231万表示 電車で見ちゃダメな傑作に「歯磨き中に吹いた」「どう撮ったらそうなるの?」
  7. でっかいヤゴを育ててみたら…… とんでもないトンボの誕生に「ただただ感動」「滅多に見られない、生命の神秘!」と100万再生突破
  8. 「日本の車のスゴさ」 ヒロミ、45年前の“激レア旧車”を発掘&オークション出品 驚きの落札価格にスタジオ騒然「こんなことあるんだ!」「ヤバイな!」
  9. 「1本11万!」 大谷翔平と真美子さんが監督へ贈った誕生日プレゼントに注目「もしかしてこれ?」「ウイスキーじゃないかも?」
  10. “高2女子”がメンズカットしたら…… 驚きの大変身に「似合いすぎ」「なんやねんこの完璧さ」と反響
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  2. 「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”
  3. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 同情せざるを得ない衝撃の光景に「私でも笑ってしまう」「こんなん見たら仕事できない」
  4. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
  7. 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は…… 斜め上のキュートな活用術に「超ナイスアイデア」「こういうの大好きだ!」
  8. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  9. JR東のネット銀行「JRE BANK」、申し込み殺到でメール遅延、初日分の申込受付を終了
  10. サーティワンが“よくばりフェス”の「カップの品切れ」謝罪…… 連日大人気で「予想を大幅に上回る販売」