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焼き肉店集団食中毒:富山・福井、菌の遺伝子型が一致 専門家「店外付着の可能性」

 「焼肉酒家えびす」の集団食中毒で、専門家は、原因となった菌が店舗外で付着した可能性が高いと指摘。富山県は、発生した店舗だけでなく、東京都を通じて仕入れ先の都内の食肉卸業者への調査も進めている。

 富山県などによると、同県の食中毒患者と死亡した福井県の未就学男児が感染した菌の遺伝子型が一致。本田武司・大阪大名誉教授(細菌学)は「遺伝子型が同じということは、同じ牛の肉か、同一施設で処理された肉である可能性が高い。店に肉が届く前に菌が付着していたとみられる」としている。

 ◇基準満たした生肉出荷なし

 厚生労働省によると、国の衛生基準を満たす「生食用」の牛肉の国内出荷は09年度はゼロ。基準に罰則がないことから、基準外の肉も各店が独自に安全対策をして提供しているとみられる。フーズ・フォーラス社は基準を満たしていない肉と認識していたとし、「国の基準に強制力はなく、会社として生でも食べられると判断した」としている。

 富山市の別の焼き肉店の担当者は「国の定めた生食用の衛生基準は満たしていない」とし、「ユッケは人気商品。メニューから外すわけにはいかず、注意を払いながら出すことになっていた」と説明した。本田名誉教授は「菌は表面に付着し、少量でも感染する。うまく処理すればかなり減らすことができるが、生肉は食べない方がよい」としている。【岩嶋悟、大森治幸、宮本翔平】

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 ◆集団食中毒をめぐる動き◆

4月27日 福井市の焼き肉店「焼肉酒家えびす福井渕店」で食事した未就学男児が病原性大腸菌O111に感染し死亡。富山県はチェーン店の「砺波店」(同県砺波市)で生肉などを食べた男女5人が食中毒症状を訴えたとして同店を27日から3日間の営業停止処分に

  29日 砺波店の客で病原性大腸菌O111に感染した6歳男児が死亡

  30日 富山県高岡市のチェーン店の客にも食中毒症状が出ていたと県が発表

5月 2日 「焼肉酒家えびす」を経営する「フーズ・フォーラス」の勘坂康弘社長らが会見し、「不適格な肉を販売したとは認識していない」と発言。富山県警が業務上過失致死傷容疑で砺波署に捜査本部を設置

   3日 富山県警が勘坂社長から任意聴取。福井県警も福井南署に捜査本部を設置。横浜市と神奈川県藤沢市の同チェーン2店舗で食事をした男女6人が下痢などの症状を訴えたと横浜市が発表

   4日 「砺波店」で4月23日に食事した後、溶血性尿毒症症候群を発症して入院していた40代女性が死亡。富山県警と福井県警は合同捜査本部を設置

毎日新聞 2011年5月5日 東京朝刊

 

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