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【どうなった?ニュースその後】

カップめんの『移り香』問題 容器改良・表示で注意喚起

2009年3月31日

異臭問題を受けてカップめんの容器に表示された注意マーク

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 コンビニ店に並ぶカップめんを手に取ると、少し前までなかった注意書きが目に入る。「においが強いもののそばで保管しないで下さい」。表示のきっかけは昨年十月、カップめんを食べた人が相次いで異臭を訴え、商品から防虫剤成分パラジクロロベンゼンなどが検出されたことだった。

 毒入りギョーザ事件など食品の安全性が問題となっていた最中だけに、新聞やテレビは大きく扱った。当初は故意の混入も疑われ、県警捜査一課も捜査に乗り出した。販売元の日本生活協同組合連合会は五商品の出荷を停止し、カップめんが店頭から姿を消した。

 しかし、製造元の日清食品は、独自に行った実験でカップめんを防虫剤のそばに一定時間置くと、成分が移ることが確認されたと主張。県警の捜査でも、外装フィルムや容器に穴がなく、製造工場や輸送ルートでもパラジクロロベンゼンは使われていなかったことなどから、「移り香」が原因と結論付け、騒動は一気に収束した。

 一方、カップめんメーカー各社は対策に乗り出した。日清食品は数年前から容器の素材を発泡スチロールから紙に切り替えていた。しかし、防湿性に優れるなどの利点がある一方、臭気に弱いことが明らかになったことで、同社は今年一月から、紙をポリエチレンではさむ従来の三層構造に、新たな素材を加えて五層構造にした容器を導入。素材について同社広報部は「企業秘密」としているが、移り香がしにくくなったとしている。さらに昨年十月末から注意喚起のテレビCMを流したほか、冒頭のような注意書きや表示をカップめんの容器に掲載した。

 影響は日清食品だけにとどまらなかった。同業の東洋水産も昨年十一月から容器に移り香注意を表示。さらに防虫剤メーカートップのエステーも、ホームページや商品の表示で、食品を防虫剤の近くに置かないよう呼び掛けている。同社の広報担当者は「食品への移り香は聞いたことがなかった」と驚きを隠さない。

 そもそも香りが外装フィルムや容器を通過することがありうるのか。

 食品科学が専門の松井利郎・九州大准教授は「プラスチックやポリエチレンは見た目は固体ですき間がないが、ミクロ的にはスカスカ。分子の間を臭気成分が通過しやすい」と話す。特にカップめんの容器の内層部分や他の食品包材などによく使われるポリエチレンは、バリアー性が弱く、移り香がしやすいという。松井准教授は「ガラスや金属の容器でないと防ぐことは困難だ」と指摘する。

 食品の安全性をめぐる予想外の事件や問題は、消費者だけでなく企業にとっても衝撃は大きい。日清食品広報部は「販売にも大きな影響があったが、できる限りの対応はしたはず。ようやく年明けから販売が回復した」と話した。 (中沢穣)

あのとき

 昨年十月下旬、カップめんを食べた神奈川県藤沢市の女性が吐き気を訴えた。この問題を受け、各保健所が調査したところ、横須賀市の男性も前月下旬、食べる直前に異臭を感じ保健所に通報していたことが判明した。衣類の防虫剤やトイレの防臭剤などに使われる有機化学物質のパラジクロロベンゼンが検出された。

 

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