昨年7月の参院選をめぐり、前法相の衆院議員、河井克行容疑者(57)=自民党を離党=と妻で参院議員の案里容疑者(46)=同=が公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕された事件で、逮捕容疑で現金配布先として名前が記されていた広島県三原市の天満祥典(よしのり)市長(73)が25日会見し、辞職すると表明した。これまで否定していた克行議員からの現金受領について一転して認め、謝罪した。

 夫妻からの現金受領をめぐり、公職を辞する首長は同県安芸太田町の小坂真治・前町長に続き2人目。

 天満市長は辞職理由について、このままの状態では市政運営に支障を来すことを理由にあげ、30日付で辞職するとしている。会見の冒頭で現金受領について「『ない』と話していたが、150万円の授受があった。申し訳ない」と述べ、頭を下げた。これは計200万円を受領した元広島県議会議長の奥原信也県議(77)に次ぐ額だ。

 天満市長によると、昨年3月に三原市内で50万円、同6月に広島市内で100万円を克行議員から受け取った。いずれも2人になったときに「とっといてくれ」「預かっておいてくれ」と言って封筒を渡された。何度も固辞したが、「相手は国会議員。信用していた。『秘密だ』『2人の約束だ』ということで守り通した」としている。

 天満市長は元県議で、同様に県議だった案里議員と同時期に県議選で初当選。参院選では案里議員の街頭演説でマイクを握るなど支援した。会見で票の取りまとめを求める意図を感じたかを問われると、「想像に任せる」と応じた。「(現金は)返すつもりだった」とも述べた。

 天満市長は会見で、新型コロナウイルス対策に注力しており、「(対応に)手が回らなかった」と釈明。一転して認めた理由については、一部で受領が報じられ、多数の報道陣が市役所などに詰めかけ「近隣の皆さんに迷惑を掛ける。タイミングをみてきょうになった」と述べた。

 夫妻をめぐる一連の疑惑が発覚後の今年3月、取材に「現金授受はない」と断言していた天満市長。今月23日には議会で改めて「現金の授受はございません」と述べた。会見では報道陣から「うそをついていたのか」との質問も飛んだが、天満市長は「うそではない」と繰り返した。

 天満市長は三原市議、県議をへて2013年に三原市長に初当選し、現在2期目。(北村哲朗、蜷川大介)