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がんを防ぐための12ヵ条

更新日:2007年09月05日    掲載日:1996年06月03日

<がんを防ぐための12ヵ条>とは

現在生きている私たちが、まったくがんにかからないようにすることは無理としても、ある程度はこれを防ぐことができます。そこで、日常の生活のなかで、「できるだけがんの原因を追放していこう」ということから生まれたのが、<がんを防ぐための12ヵ条>です。

今日からさっそく生活改善を
この12ヵ条は、とりたてて特別なことではありません。日常生活のなかで、少しだけ気をつければ、だれにでもできる簡単なことです。今まで無頓着だった日ごろの生活態度を、これを機会に総点検してみてください。少しでもがんの原因になるようなことを遠ざけて、明るい健康な生活を送りたいものです。

1.バランスのとれた栄養をとる −いろどり豊かな食卓にして−

食物は、生命の根源。私たちの健康を守る第1のカギが、毎日の食事であることはいうまでもありません。栄養のバランスがくずれると、さまざまなかたちで体に支障があらわれ、さらには病気の原因にもなります。今や日本人の死亡原因の第1位となった病気、がんも、その例外ではありません。

偏食をつつしみましょう
最近、食物のかたよりと発がんの関係が、疫学調査や動物実験によって明らかになってきました。わかってきたのは、私たちが日々食べている食品群の中に、がんを引きおこす物質とがんを抑える物質がともに存在しているということです。

たとえば、乳がん、大腸がん、子宮内膜がんなどは、脂肪のとりすぎと重大な関係があるといわれています。その他、あまり多量に食べると、発がんの心配が生じる食品も見出されつつあります。反対に発がんを抑える栄養素として、ビタミンAやビタミンC、Eなどがクローズアップされ、食物繊維にも発がん抑制の効果が知られています。ですから、食事の際はできるだけ多くの種類の食品をとり、食物中の発がん物質の作用を相殺していくことが大切です。

がんの予防は食事から
最近では調理済み食品の利用が高まり、材料の種類も限られるせいか、栄養の面でかなりのアンバランスをきたしていることが、国民栄養調査の結果にもでています。脂肪の摂取は昭和30年当時の約3倍に増える一方、食べる野菜の量は少なくなってきています。ほうれんそうのおひたし、きんぴらごぼう、かぼちゃの煮物など、野菜料理をどんどん食卓に加えてください。

偏食せずにいろいろなものをバランスよく食べることは、栄養の面ばかりではなく、発がんの危険を低下させるという点からも大切なことなのです。

2.毎日、変化のある食生活を −ワンパターンではありませんか?−

多くの人は特定の食物に対して嗜好があるので、好きなものを繰り返し食べがちです。問題は度がすぎることです。食物中の発がん物質の濃度は、たいていはそれほど高くないのですが、同じ食品ばかり食べ続けることは、体をいつもがんの危険にさらすことになります。

たとえば、牧場で大量にわらびを食べた牛に血尿がでたり膀胱がんが発生し、一時、問題になりました。わらびをたまに、少し食べるくらいなら心配ありませんが、たくさんの量を、毎日食べるのはさけたほうがいいでしょう。

バランスのよい栄養をとること、ただ、それも、にんじんにカロテンがあっていいからと、そればかり食べるのではなく、できるだけ多くの緑黄色野菜からカロテンをとることが望ましいのです。バランスよく、そしてバラエティーのある食生活を心がけてください。

同じものを繰り返さないという注意は、薬にもいえます。医師の指示で必要とされる場合以外は、同一の薬を飲み続けることは極力さけたほうが賢明です。

3.食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに −おいしい物も適量に−

「長生きの秘けつは腹八分目にあり」とよくいわれますが、がんについても同じことがいえそうです。ネズミの実験によると、好きなだけ食べさせたグループと、食事量を60パーセントくらいに制限したグループとでは、制限グループのほうが発がん率が低く、長生きしているという結果がでています。


食べすぎの中でも、とくに問題とされるのが脂肪の量で、脂肪をとりすぎると乳がんになりやすいという報告があります。

従来、日本人女性の乳がんは、閉経前6に対して、閉経後4の割合でした。それが近ごろは5対5となり、アメリカ人女性の4対6にだんだんと近づきつつあります。原因は、閉経期が遅くなったこともありますが、動物性脂肪のとりすぎが考えられます。

また、脂肪の摂取量は、乳がんだけでなく、大腸がんや前立腺がんなどの発生とも関連のあることが指摘されています。

食べすぎと脂肪のとりすぎには、十分気をつけましょう。

4.お酒はほどほどに −健康的に楽しみましょう−

お酒が健康を害するといえば、一般に肝臓を考えますね。でも、飲みすぎが及ぼす悪影響は、肝臓だけにはとどまりません。WHO(世界保健機関)の調査では、過度の飲酒と、口腔がん、喉頭がん、食道がんは関係があるという報告がなされています。

フランスのノルマンディー地方の住民は、アルコール濃度の高いブランディーを飲む習慣があり、昔から食道がんが多いといわれます。強い酒で口腔や咽頭、食道などの粘膜の細胞を傷つけるのが原因だろうと考えられます。

アルコールの多量摂取と肝臓がんの発生にも関係がみとめられています。また、酒好きの人は、つまみを食べずにお酒だけを飲むことが多いので、栄養のバランスがくずれて、がんになりやすい体の条件をつくる可能性も高いわけです。とくに、飲みすぎのうえにたばこが重なると、悪い因子が相乗的にはたらいて、がんの危険も増します。

飲酒中のたばこは極力ひかえるよう努力し、強いお酒は薄めて飲むか、水といっしょに飲むようにしましょう。まずはお酒はほどほどに。

5.たばこは吸わないように −特に、新しく吸いはじめない−

たばことがんの間に深い関係があることはみなさんもご存知でしょう。40歳以上の日本人男性、12万人以上を、長期間にわたって調査した結果、1日25本以上たばこを吸う人は、吸わない人に比べて、喉頭がんが90倍以上、肺がんが7倍の死亡比になることがわかっています。しかし、禁煙すればがんになる危険はそれ以上増えず、禁煙後5年くらいたつとほとんど吸わない人と同じくらいの状態に近づきます。

まわりの人も迷惑します
最近は、吸っている本人だけでなく、周囲の人に与えるたばこの害が問題になっています。紙巻たばこの火のついているほうから出る紫色の煙は、吸い口のほうから出る煙よりも、ある種の発がん物質については含有量が高いことが知られています。妻が吸わなくても、夫が1日20本以上吸うヘビースモーカーの場合、喫煙しない夫をもつ妻と比べて、肺がんの死亡率が2倍も高いという報告もあります。

日本でも諸外国と同様、肺がんが年々増え、平成10年(1998年)には、胃がんを抜いてがん死亡のトップになりました。肺がんの予防のために禁煙を心がけましょう。どうしてもというなら、できるだけ本数を減らしてください。また、たばこを吸いはじめる年齢が低いほど肺がんにかかりやすいということもわかっています。未成年の喫煙にはまわりでも気を配って、絶対に止めるようにしていきたいものです。

6.食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる −緑黄色野菜をたっぷりと−

ビタミン及び、食物繊維を多く含む食品群
ビタミン及び、食物繊維を多く含む食品群

ビタミン類は、人間の体にとって「潤滑油」のようなもの。なかでも、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEには、発がんを防ぐはたらきもあることが知られています。また、野菜などに含まれる繊維質にも、同じような効果があることは、第1項でもお話ししたとおりです。

ビタミンA・カロテン
緑黄色野菜に多く含まれるベータ・カロテン(体内でビタミンAに変わる)やレバーなどに含まれるビタミンA、緑茶や緑黄色野菜に含まれる植物成分のポリフェノールなどは、発がん促進物質の効力を低め、がんの発生を防ぐ作用のあることが動物実験などから明らかになっています。

また、カロテンやビタミンAを含む食品をたくさん食べることで、肺がん、膀胱がん、喉頭がん、胃がんなどにかかりにくくなることが知られています。

<ビタミンA・カロテンを多く含む食品>
にんじん、ほうれん草、小松菜、春菊、にら、レバー、うなぎ、バター、チーズ

ビタミンC・ビタミンE
ビタミンCというとレモンを思い浮かべますが、パセリやピーマン、いちごなどにも多く含まれています。食品に含まれる物質同士が体内で反応しあって、発がん物質がつくられる場合があるのですが、ビタミンCにはこの反応を抑えるはたらきがあります。落花生や胚芽米などに含まれるビタミンEにも同じような作用が認められています。

<ビタミンCを多く含む食品>
パセリ、ブロッコリー、ピーマン、たか菜、ほうれん草、いちご、キウイフルーツ、柿、レモン

<ビタミンEを多く含む食品>
落花生、胚芽米、大豆、ごま油、えんどう、いわし、うなぎ、卵

食物繊維
食物の繊維質は、大腸のはたらきを活発にして、便通をよくします。便が腸の中にある時間が短くなり、さらに、繊維成分が腸内にある発がん物質の濃度を薄めるので、大腸がんにかかりにくいといわれています。

これらのビタミンや繊維成分を、自然の食品の中からしっかりとりましょう。ビタミン剤などに頼らずに、いろいろな野菜をたくさん食べましょう。


<食物繊維を多く含む食品>
干し柿、ひじき、ライ麦パン、甘栗、ファイバーパン、いんげん豆(乾)、そら豆(乾)、ポップコーン、糸引納豆、おから

7.塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから −胃や食道をいたわって−

食塩摂取量の年次推移

平成16年における 性・年齢階級別食塩摂取量(20歳以上)

日本人の代表的ながんといえば、胃がんがあげられます。その割合は、少しずつ減ってきているとはいえ、肺がんをわずかに下回る状況であり、大腸がん、肝臓がんや乳がんなど他のがんに比べるとまだ圧倒的に多いのが現状です。この胃がんの発生に密接な関係があると指摘されているのが、塩分の摂取です。

1日にとる食塩の望ましい量は、10グラム以下とされています。食塩のとりすぎが脳卒中や心臓病などの循環器疾患を起こしやすく、一般に塩をひかえる傾向にあり、胃がんの死亡率も確実に下がってきていますが、全国平均1人1日当たりの食塩摂取量は、下図に示すとおり、まだ10グラム以下にはなっていません。

いずれの年代においても目標摂取量を超えており、男女とも50歳代が最も高くなっています。

特に最近では摂取量の下がり方が鈍ってきています。また、胃がん死亡率には地域差があることが知られていますが、この差も塩分の摂取との間に密接な関係があります。しおからなど塩分の多い食品を大量に食べないことと、できるだけ塩味を抑えた調理を心がけましょう。

また、熱い茶がゆをよく食べる地方に食道がんが多いという報告もあり、食塩の場合と同じように、熱いものはがんが発生しやすい状況をつくります。あまり熱いものはさましてから食べることをおすすめします。

8.焦げた部分はさける −突然変異を引きおこします−

魚や肉を焼いて焦がすと、細菌などに突然変異を引きおこす物質が生じることが、最近明らかになってきました。この焼け焦げに含まれる発がん物質は、調理温度が高く、調理時間が長くなるほど、量が増え、とくに、肉や魚、野菜などを直火で焼いたり、フライパンの上で熱を加えて焦がした場合に多くできます。

ふつう、焦げた魚や肉の1食分で口に入る発がん物質の量は、ごくわずかです。しかし、焼け焦げの中に含まれる発がん物質は数種類が確認されていますし、また、でんぷんや糖などの炭水化物のお焦げにも、細菌の変異を引きおこすもとになる物質が含まれています。

あまり神経質になる必要はありませんが、焦げた部分を大量に食べることはさけたほうがいいでしょう。

9.かびの生えたものに注意  −食べる前にチェックして−

ひとくちにかびといっても、いろいろな種類があります。有害なのは、ピーナッツなどのナッツ類やとうもろこしにつくかびで、これには強い発がん性が認められています。

東洋人に肝臓がんが多い理由として、B型肝炎ウィルスなどのほかに、このかびもが関わっているのではないかと疑う学者もいるほどです。

外国のある地域で売られているピーナッツのほぼ50パーセントに、微量ながら発がん性のあるかびが認められたという報告もあります。日本では輸入の際に厳重にチェックされているので危険はありませんが、一応、食べる前によく確かめましょう。日本産のピーナッツは安全です。

また、ある種のチーズのように意図的にかびを用いた食品については発がんの心配はありません。

10.日光に当たりすぎない −太陽はいたずら者です−

かつて、海や山で太陽の日ざしを浴びて肌をかっ色にやくことが、健康のシンボルであるかのようにいわれた時期がありました。ところが、最近では、紫外線が皮膚に有害であることがわかって、肌のやきすぎはなるべく避けたほうがいいといわれています。

紫外線でやけた肌は、一種のやけどの状態にあります。炎症が続くと、細胞の遺伝子が傷つけられ、がんを誘発する可能性も高いわけです。

人種的にみると、紫外線に過敏に反応するのは、メラニン色素の少ない白人で、熱帯地方にすむ白人には皮膚がんや悪性黒色腫が多いといわれます。それに比べると黒人はずっと紫外線に強く、日本人も黒人並みに耐性があります。そのため、わが国では比較的、皮膚がんや悪性黒色腫が少ないのですが、まっ黒に日焼けするほど肌をやくことは、なるべくなら避けましょう。

11.適度にスポーツをする −いい汗、流しましょう−

「栄養」、「運動」、そして「休養」は健康な生活をおくるための条件といえます。疲労がたまれば、気分も憂うつになりがちです。さらに疲労が慢性化し、ストレスが続くと、体のいろいろな生理機能が低下して、病気にかかりやすくなります。がんになる危険も高いわけです。

発がん物質を与えた動物にフラッシュをたいたり、高温にしたりしてストレスを加えると、発がん物質だけを与えた場合よりもがんの発生率が高くなったという実験結果がでています。また、疲労によって生じたある化学物質が、ネズミの腫瘍の発育を促進したという報告もあり、疲労とストレスは大敵です。

最近、1日中いすに座って仕事をしている人々の間に大腸がんが多いという研究結果もだされています。気分転換のためにも、そして健康づくりのためにも、積極的に機会をつくって、適度なスポーツを楽しみたいものです。

12.体を清潔に

毎日、シャワーを浴びたり、入浴したりして体を清潔に保つことで、皮膚がんや陰茎がん、子宮頸がんなどがある程度予防できることをご存知ですか?

200年ほど前のイギリスでの話ですが、煙突掃除を職業としている人々の間に陰嚢の皮膚がんが発生し、問題になりました。その後、煙突のススの中に皮膚がんの原因となるものが見つかり、仕事をしたあとは体を洗うようになって、この皮膚がんはみられなくなりました。これは、体を清潔にすることでがんの発生が予防できたいい例です。

割礼の風習のあるユダヤ人や回教徒には陰茎がんが少なく、体を洗う設備の不十分な地域に子宮頸がんが多いことが知られています。

皮膚の汚れのたまりやすい部分を、いつも清潔に保つよう心がけましょう。


監修 国立がんセンター
発行 財団法人がん研究振興財団


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