野球賭博問題、マック鈴木氏に聞く
日本人で初めてアマチュアからメジャーリーガーとなった元マリナーズのマック鈴木=鈴木誠=さん(40)に、メジャー選手会が毎年キャンプ中に行っている賭博セミナーについて聞いた。彼はその時の言葉を守って、台湾時代に暴力団から八百長を勧誘されながら拒否したことも初めて明かしてくれた。
絶対やるな 米国、メキシコ、台湾、ドミニカと世界の野球を股にかけたマックさんは、野球への敬意を忘れない。
それが培われたのが、米国時代のキャンプでの大リーグ選手会によるセミナーだった。独立チームのサリナスから18歳でマリナーズと契約、いきなり招待選手でメジャーキャンプに参加。「まだ英語がよく理解できなかった時期でした。選手としてのいろいろな注意事項がありましたが、一番強調していたのが『野球賭博は絶対やってはいけない』というお達しでした。永久追放になっているピート・ローズだけでなく、かつてウワサにのぼった選手を実名で出すなど、具体例を出して注意喚起をしてくれました」
米国では、ラスベガスなどで野球などプロスポーツを対象にしたギャンブルが合法化されている一方で、非合法で野球賭博も行われている。通算最多安打記録を持つローズは、1989年に手を出したことが発覚し、当時のジアマッティ・コミッショナーから追放処分を受けた。再発を避けるため、メジャーキャンプでは、毎年欠かさず選手会関係者が語り継いでいる。そこでは、合法のギャンブルであっても手を出してはいけないと説いているそうだ。
マックさんはその言葉を現役時代、忘れずにいた。08年の台湾・LaNew時代には、暴力団関係者に軟禁され、当時台湾球界を揺るがせていた八百長を持ちかけられた。もちろん、敢然と拒否してその場から立ち去った。
そんな経験をしているだけに日本球界の現状がもどかしい。「オリックスでもプレーしましたが、選手会関係者に賭博について強調された覚えがない。それに、日本では米国に比べ、2軍の生存競争が激しくない。シーズン中は野球漬けにならなくては」と憂慮した。
今回の事件は、本人だけでなく球団、選手会など球界全体で考えるべきだと話している。
◆マック鈴木(本名・鈴木誠)1975年5月31日、兵庫県生まれ、40歳。滝川二高を中退し16歳で渡米。191センチの長身から投げ下ろす速球を生かし、93年にマリナーズと契約。96年日本プロ野球を経由しない選手では初のメジャー昇格。98年から02年まで延べ5チームでメジャー通算16勝(31敗)をマーク。03年に帰国し、オリックス2年間で5勝15敗。その後、メキシコ、台湾などでプロ野球を経験した。現在は神戸での野球教室の傍ら、淡路島のスポーツジム「サンライズマックジム」顧問を務める。夫人はお笑いコンビ・クワバタオハラの小原正子。
コメント