「家族写真」
2021年3月1日
作:松井玲奈
主人公は、小学6年生・11歳の女の子「アイ」。父親は単身赴任、母親は仕事で夜遅くまで 働いている。母親は「他の子よりずっと大人だから助かるわ」などと、「アイ」に願望のような ことばをかけることもあった。両親を困らせたくない、でも、まだ甘えたいと揺れ動く気持ち。そんな「アイ」は留守番をしているとき、アルバムを見返している。そこには、毎年撮っていた家族写真があった。しかし、3年生の写真を最後に撮られなくなっていた。
テキスト:松井玲奈「家族写真」(朝日文庫「25の短編小説」所収)語り:三上 弥
「火繩銃」
2021年3月8日
作:江戸川乱歩
(2020年9月21日放送のアンコール)
冬休みに友人から届いた「暇があれば遊びに来ないか」という一通の招待状。
時間を持て余していた私は、橘とともに友人のもとへ向かう。長い休みを楽しむために向かった山麓のホテルで私たちが見たものは…。
語り:新井秀和
「無用の人 Birthday Surprise」
2021年3月15日
作:原田マハ
50歳の誕生日を迎えた関東近郊の小さな美術館で学芸員を務める羽島聡美の職場に、あやしげな茶封筒が届く。差出人は1か月前にがんで亡くなったはずの、聡美の父だった。差出日は2月1日。亡くなる直前、娘に荷物を届けたのだ。スーパーの従業員でうだつのあがらなかった父、リストラされ、母にも離婚され世間から「無用の人」扱いされていた父、しかし、芸術の道を進んだ聡美には、そうは思えなかった。長年連絡をとっていなかった聡美は、突然の便りにいぶかしむ。果たして、茶封筒の中身とは?父が残した娘への最期のメッセージとは?
テキスト:原田マハ「無用の人 Birthday Surprise」(講談社文庫「あなたは、誰かの大切な人」所収)語り:徳永圭一
「雪の降る町、春に散る花」
2021年3月22日
作:豊島ミホ
(2020年4月6日放送のアンコール)
雪の降る町に住む高校3年の加代子は、春から東京の大学に進学する。田舎を離れ、付き合っている佐々木くんとも離ればなれになることが決まった
3月。上京するまで、佐々木くんとの最後の日々を過ごしながら、加代子の中に込み上げる想いとは。
語り:池田伸子
「さるの湯」
2021年3月29日
作:高橋克彦
(2020年3月16日放送のアンコール)
なにげなくふるさとの海沿いの被災地を訪れ撮った写真には、震災で亡くなった人たちが写りこんでいたのだ。生き残った人たちにとって大切な人たちが、そこにいた。しかしなぜ自分が撮る写真だけがこうなるのか。避難所を撮影してまわるうち、地域の世話役から「さるの湯」という場所を教えられる。サルが入りにくるほどの山奥の温泉で、地元では死者が旅立つ前に入りに来る場所だといわれているという。導かれるように訪れた「さるの湯」で、「私」はそこに集う「人」たちが残してきた想いにふれることになる。
語り:斎 康敬