JR苫小牧駅に直結する商業施設「苫小牧エスタ」が28日、閉店した。施設の老朽化に加え、郊外への大型店出店などの影響で売り上げが落ち、テナントの撤退も相次いだため、JR北海道が営業を断念した。2014年8月末の「苫小牧駅前プラザエガオ」閉店に続き、17万人都市・苫小牧の表玄関の「顔」がまた一つ姿を消した。

 苫小牧エスタは地上3階建てで、1982年に開業した。当初はJRや地元企業などでつくる第3セクター「苫小牧ステーションビル」が所有・運営し、衣料品やファストフードなど最大38店舗が入居した。その後売り上げが減り、テナント撤退も続いて、苫小牧ステーションビルが2000年に経営から撤退。JR北海道が資産を買い取り、直営で運営していたが、34年の歴史に幕を下ろした。

 JR北海道が閉店を正式発表した昨年7月時点で、すでに1、2階は閉鎖状態だった。100円ショップなど六つのテナントが入っていた3階も、最終日まで営業したのは婦人服の「インテリエ」だけ。

 同店はエガオからエスタへ移転した2店のうちの1店で、また移転を余儀なくされた。午後から商品の梱包(こんぽう)作業を始めた佐藤順子店長は「長いお付き合いのお客さまもいて、交通の便も良い駅前から離れることはできない。新天地でも頑張ります」と話した。4月14日からグランドホテルニュー王子(表町4)で営業を再開する計画だ。

 JR北海道はエスタの今後について「検討中で、まだ何も決まっていない」(広報部)と話している。

■駅周辺、進む空洞化 「人口は多いのに、なぜ」

 苫小牧エスタの閉店に、市民や関係者からは惜しむ声とともに、市中心部で一層進む空洞化への懸念の声が上がった。

 「昔は(駅周辺で)いろいろな大型店をはしごして回った。人口は多いのに、なぜこんなになっちゃうんだろうね」。エスタ前を通りかかった市内旭町の瀬崎ヨシ子さん(73)はしみじみ語った。

 苫小牧商工会議所の市町峰行副会頭は「苫小牧の顔とも言える場所にあり、閉鎖はさびしい」と話す。すぐ南側の苫小牧駅前プラザエガオも空きビルになっているだけに「このままの状態が続くのは良くない。商工会議所としても市と連携し、対策を考えていきたい」と述べた。

 苫小牧市もエスタの今後に気をもむ。エガオを含めたJR苫小牧駅南口エリアの再整備を担当する須郷敏広まちづくり推進室長は「取り組みを進める中での閉鎖は残念。JRは引き続きエスタのビルをしっかり管理してほしい」。

 市商店街振興組合連合会(市商連)の秋山集一理事長は「日本全体が人口減少の局面に入り、商店も量より質の時代になった。地元商店街としては、各店の個性を生かし中心街を盛り上げたい」と話した。苫小牧商工会議所などによると、苫小牧エスタにつながる駅南口階段の歩行者の2015年度の通行量は、1990年度と比べて、平日が1日2348人で半減、休日が同2570人と4分の1に減少。駅南口エリアでは、05年に丸井今井苫小牧店、14年にエガオが閉店した。(能正明)