空自のYS11初号機、ラストフライト 64年東京五輪で聖火を輸送

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最終フライトをする航空自衛隊の飛行点検機「YS11FC」=埼玉県狭山市の航空自衛隊入間基地で2021年3月17日午前9時48分、幾島健太郎撮影
最終フライトをする航空自衛隊の飛行点検機「YS11FC」=埼玉県狭山市の航空自衛隊入間基地で2021年3月17日午前9時48分、幾島健太郎撮影

 戦後初の国産中型旅客機「YS11」をベースに航空自衛隊が導入した「151号機」が17日、拠点とする入間基地(埼玉県)でラストフライトをした。当初は人員輸送機、その後も航空管制施設の点検機として、半世紀あまりにわたって日本の空を飛び回ってきたが、2020年度をもって引退する。

 YS11は、政府と民間企業が出資した特殊法人「日本航空機製造」が開発した双発プロペラ機。民間航空会社や海上自衛隊、海上保安庁が導入し、1964年の東京五輪では聖火の国内輸送に使われたことでも知られている。

 空自は64~71年度に計13機を取得し、151号機はその第1号。当初は人を輸送していたが、92年の改修以降、飛行機を無線誘導する自衛隊施設の設備が正確に作動しているかを確認する点検機「YS11FC」に。垂直尾翼に描かれている赤い市松模様が特徴で、入間基地に所属する自衛隊唯一の「飛行点検隊」が運用してきた。最も多い時には3機あったYS11FCも151号機を残すのみとなっていた。

 この日、乗員5人を乗せた151号機は午前9時半過ぎ、独特の高いエンジン音を響かせて離陸。上空で8の字を描いたり、着陸後にすぐ離陸する「タッチ・アンド・ゴー」をしたりと、さまざまな飛行を報道陣に披露した。約1時間後に着陸すると、ラストフライトの恒例行事とされる消防車からの放水を受け、エンジンを止めた。

 機長の渡辺潤一3等空佐(54)は「手動操舵(そうだ)で、風の影響も受けて乗りこなすのが難しい分、愛着が湧いた。しっかりと味わって飛び、はつらつとした気持ちです」と話していた。

 空自はYS11について17年5月に輸送機としての運用を終え、点検飛行用としての運用も21年3月に終了する。飛行点検隊は今後、現在も使っている米国製の後継機で任務に当たる。井筒俊司・航空幕僚長は11日の記者会見で「とても高齢な機体で、任務を十分に遂行した」とねぎらった。空自以外のYS11はすべて引退しており、残る機体は、空自が飛行機の電波情報の収集・測定などをしている電子戦用の6機となる。【松浦吉剛】

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