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メキシコ戦の前日練習後に決起集会を呼びかけたイチロー(左)
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勝つしかない。初の国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」に出場している日本代表は14日(日本時間15日午前9時)、エンゼルスタジアムでメキシコ代表と対戦する。13日に同組の韓国代表が米国代表を破ったことで、王ジャパンはメキシコに敗れると準決勝進出への道が断たれる。この日、アナハイム近郊の大学施設で練習。夜にはイチロー外野手(32=マリナーズ)が決起集会を呼びかけ、チームの結束を固めた。
このまま終わるわけにはいかない。米国戦の敗戦から約25時間。イチローはナインと、自ら予約したロサンゼルス市内の焼き肉店にいた。メジャーでのシーズン中に、何度も足を運ぶ同店で開かれた野手会。それは準決勝進出へ向けての“決起集会”でもあった。
「言葉で何かを伝えるよりも行動が大事だと気がついた。(日本は)いいチームになってきたよね。アメリカ戦で自信を得たこともあったし、チームとして1つ上のステップを踏む大きなきっかけになったと思う」
判定が覆るという歴史的な“誤審”で敗れた運命の米国戦。前日の試合後に「消化するのが難しい。あす(13日)試合がなくてよかった」と話していたが、悔しさは勝って晴らすしかないことをナインの誰もが感じ取っていた。その「チームの意志」を確認するための集い。焼き肉に舌鼓を打ちながら、思いは確実に1つになっていた。
もちろん、野手だけではない。午前10時から行われた練習。真っ先にグラウンドに飛び出したイチローは練習中、米国戦に先発した上原と右翼付近で30分近く話し合った。5回1失点の力投が報われなかった先発投手へのフォロー。練習を終えた上原は「惜しかったなあ、きのうの金星」と笑っていた。
ちばあきお氏の人気野球漫画「キャプテン」を何十回と繰り返し読んでいるイチロー。好きな登場人物は厳しい主将の「イガラシ」だという。野球発祥の地で、日の丸を背負って、まさに主将の働きを見せている。その姿に感化され、左足を負傷した松中が欠場した場合は、代役の4番を打つ可能性がある多村も「みんなの気持ちが1つになって、また大きな力が出せると思う」と言った。
決起集会を終え、宿舎に戻ったナインが見たのは韓国の歴史的な米国戦の勝利。これで2次リーグ突破には残り2戦全勝するしかない。王監督は「1つ負けているからね。もう勝つしかないんだ」と言った。その第一関門、メキシコの先発はロアイザ(アスレチックス)。イチローは過去の対戦で19打数7安打とカモにしている。「(前日のことを)みんなは消化して、晴れやかだと感じた」。負けられない。すべてを背負って、イチローが王ジャパンを導く。
≪先発松坂ピリピリ≫松坂の引き締まった表情が14日のメキシコ戦の重要性を物語る。負ければ2次リーグ敗退。「試合前日は話しません」。キャッチボールを中心とした軽めの調整を行った後は報道陣を寄せ付けなかった。前日にはエンゼルスタジアムのマウンドをチェック。米国戦に先発した上原から乾燥した空気やマウンドの感覚などの情報も得た。「硬いマウンドは自分に合っている。2次リーグで終わるわけにはいかない」
9日のレンジャーズ戦は4回を2安打1失点、最速150キロを記録した。王監督も「走者を出してもゼロに抑えるのが彼の持ち味。本番でも良いものを出してくれると思っている」と期待した。
松坂はシドニー五輪で4位に終わり泣いた。アテネ五輪では銅メダル。もう悔しい思いのまま日本に帰るわけにはいかない。
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