「そういう資料はありません」「この部屋には入れません」。今月17日、抜き打ち調査に訪れた防衛省と内閣府の担当者に対し、三菱電機鎌倉製作所は抵抗する姿勢を見せたという。その後、本社のコンプライアンス担当者に「調査に協力してくれない」と連絡して態度は変わったが、防衛省は不正が組織的に行われていた可能性が高いとみて30日、特別調査に乗り出す。
防衛省は昨年秋の情報提供を受けて情報の信頼性などを確認。17日以降、約30人の職員が同製作所近くのホテルに泊まり込み、従業員の勤務実態の調査や聞き取りを進めてきた。
三菱電機は10年度防衛省の主要装備品契約額が三菱重工に次ぐ2位。これまでの調査では03式中距離地対空誘導弾の設計に絡む不正が明らかになったが、別の装備品でも同様の方法で不正が行われていた可能性もあり、徹底調査する。【鈴木泰広】
三菱電機を競争参加資格の停止処分にした宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、同社にはJAXA発足後の03年10月以降、3200億円を契約金として支払っている。内訳は情報収集衛星本体のほか、衛星から送られるデータの処理装置などの費用だ。
同社との間では、契約時には概算額で契約し、完了後に実費を請求する「概算契約」が中心だ。このため意図的に水増しをされても見破れない危険性があるという。
宇宙開発をめぐる過大請求では98年、NECがJAXAの前身にあたる宇宙開発事業団に対し、20億円前後の水増し請求をしていた事例がある。JAXAは「衛星のように特殊な機器では金額を確定しづらい。常時監視するわけにもいかない」と話す。【比嘉洋】
毎日新聞 2012年1月28日 東京朝刊