• コメント

ロシア、勢力圏への影響力低下 経済停滞、欧米と対立続く―21年、好転兆し見えず

2020年12月30日07時57分

会議に臨むロシアのプーチン大統領=24日、モスクワ郊外ノボオガリョボ(EPA時事)

会議に臨むロシアのプーチン大統領=24日、モスクワ郊外ノボオガリョボ(EPA時事)

  • ベラルーシの反政権デモ=9月27日、ミンスク(AFP時事)

 ロシアは今年7月に憲法改正が成立し、既に20年間君臨するプーチン大統領が2036年まで大統領の座にとどまることが可能となった。しかし8月以降、ロシアが勢力圏と見なす旧ソ連圏で紛争や混乱が相次ぎ、影響力低下が指摘された。新型コロナウイルスの感染者数は世界で4番目に多く、経済は停滞。欧米との関係改善も進まず、内外の状況が21年に好転する兆しは見えない。
 旧ソ連圏の混乱では、9月下旬から約1カ月半続いたアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる紛争で、対応に苦慮した。トルコを後ろ盾とするアゼルバイジャンがロシアの同盟国アルメニアに勝利。ロシアは勢力圏内でトルコの影響力拡大を許した。
 8月のベラルーシ大統領選をめぐっては反政権派の抗議デモが続き、キルギスでも10月に政変が起きた。11月のモルドバ大統領選は、親欧米の候補が親ロシアの現職を破った。ソ連崩壊30年の節目となる21年を前に混乱が相次ぎ、プーチン氏も12月、「域内の状況に問題がないわけではなく、全体として落ち着かなかった」と認めた。
 ロシアは8月に新型コロナの国産ワクチンを世界に先駆けて承認したが、国民に広く行き渡らず、感染拡大に歯止めがかからない。欧米の制裁で低迷する経済はさらなる打撃を受けた。
 プーチン氏は12月の記者会見で、国内の貧困層の割合が「残念ながら13.5%まで上昇した」と明かした。国民の不満はくすぶり、極東ハバロフスクでは地元知事逮捕に端を発した反政権デモが7月から続いている。
 8月の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺未遂では、同氏の移送先のドイツで旧ソ連の軍用神経剤「ノビチョク」系毒物が確認され、欧米との関係は一層悪化。21年1月にはロシアに厳しい立場を示すバイデン次期米大統領が就任し、さらに緊張が高まる可能性がある。
 21年9月予定のロシア下院選で、バイデン政権が反体制派を支援する事態を警戒し、ロシア議会は12月に次々と規制法を可決した。カーネギー財団モスクワ支部のコレスニコフ上級研究員は「今年は新型コロナを背景に多くの出来事があったが、ロシアの権威主義体制は硬直したままで、強硬さを増している」と指摘した。

特集

国際

コラム・連載

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ