社会福祉学
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論文
共同募金運動にみる寄付行為の意味づけ――社会化からファッション化へ――
野口 友紀子
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2017 年 58 巻 2 号 p. 67-79

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抄録

この研究では,戦後から1960年代半ばまでの『社会事業』誌から共同募金運動にみる寄付行為の意味づけを明らかにする.共同募金には運動理念を義務と捉えた研究がすでにあるが,本研究では当時の社会福祉事業関係者たちによる共同募金への認識に焦点を当てる.

当時の論考には,募金への自主的な参加と戸別訪問による強制的な寄付との矛盾の問題や社会福祉事業の社会化を論じるものがあった.

分析の結果,関係者たちは共同募金に社会福祉事業の社会化という理想を追い求めたこと,1960年代半ばにはファッション化したと批判したことが明らかになった.つまり,自発性に重きをおいた関係者たちの意図は,募金活動が普遍化するなかで素朴さとはかけ離れた流行となったことで,当初目指した国民が助け合い精神を持ち,参加する社会化とは異なる方向へ進んだ.このことから当時の関係者たちは当初から運動理念とは異なる意味を寄付行為に持っていたと言える.

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© 2017 一般社団法人 日本社会福祉学会
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