藤津亮太のテレビとアニメの時代 第25回 プライムタイムにアニメが放送されない時代

藤津亮太のテレビとアニメの時代
第25回 プライムタイムにアニメが放送されない時代

藤津亮太
1968年生まれ。アニメ評論家。
編集者などを経て、2000年よりフリーに。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)。編著に『ガンダムの現場から』(キネマ旬報社)など。アニメ雑誌、そのほか各種媒体で執筆中。
ブログ:藤津亮太の 「只今徐行運転中」 http://blog.livedoor.jp/personap21/

 

 今回は2001年から2006年までの朝から19時台までに放送された番組を表にまとめてみた。
 この時期の年間放送本数(タイトル)の変遷をまとめたグラフを見ればわかる通り、2000年代前半は、2006年の過去最高の放送本数に向けて右肩上がりで放送本数が増えていく時期にあたる。
 だが、この時間帯の放送枠は大きく変動せず、約30本前後で推移している。深夜枠ではないアニメの多くは2クール(半年)~4クール(1年)が基本なので、1クール作品が中心になったため、作品数は大幅に増えたというようなことも起きていない。つまり2000年代前半の放送本数増大は、そのまま深夜アニメの増加であることがわかる。

[2001年から2006年まで 朝から19時台までに放送された番組一覧]

2000年-2001年 http://www.animeanime.biz/wp-content/uploads/2011/06/fujitu2511.jpg
2002年 http://www.animeanime.biz/wp-content/uploads/2011/06/fujitu2512.jpg
2003年 http://www.animeanime.biz/wp-content/uploads/2011/06/fujitu2513.jpg
2004年 http://www.animeanime.biz/wp-content/uploads/2011/06/fujitu2514.jpg
2005年 http://www.animeanime.biz/wp-content/uploads/2011/06/fujitu2515.jpg
2006年 http://www.animeanime.biz/wp-content/uploads/2011/06/fujitu2516.jpg

 この時期のトピックとしてはずせないのが、まず2006年の『ONE PIECE』の時間帯移動だ。日曜19時から日曜9時へ。全国枠からローカル枠への変更であり、この時間帯移動によりフジテレビには19時台のアニメは存在しなくなった。これは少子化の影響もあって、19時台にアニメを放送してもTV局が望むだけの視聴率がとれなくなってきたためだ。
 これはフジテレビだけではなく、フジテレビと視聴率でしのぎを削っている日本テレビでも状況は同じ。
 2009年3月をもって読売テレビの枠だった19時台の『名探偵コナン』と『ヤッターマン』がそれぞれ朝と夕方に時間帯移動して、日本テレビ制作のバラエティに変わっている。
 これで在京キー局5局の中で、19時台にアニメを編成しているのはテレビ東とテレビ朝日だけとなった。
 この2局は、視聴率競争では日本テレビ、フジテレビと競る位置にいないからこそ、ニッチな立ち位置で19時台にアニメを放送できていると考えられる。
 そのテレビ朝日は火曜日19時台に、2009年10月から『スティッチ~いたずらエイリアンの大冒険~』『怪談レストラン』を編成。新たにプライムタイムにアニメ枠を増やした。ただこの放送枠は、続いて『スティッチ~ずっと最高の友達~』『デジモンクロスウォーズ』を放送し、1年半後の2011年春に終了してしまった。やはり視聴率で苦戦して、定着しきれなかったと見るのが妥当だろう。『デジモンクロスウォーズ』は朝の放送枠へ移動して第二期として再スタートしている。

 

 2011年6月現在、放送されているアニメを表にまとめたが、現在19時台に放送されているアニメは8本。うち6本がテレビ東京となる。これは「ゴールデンタイムにアニメで数字がとれた時代」というのが完全に終わった、ということだ。
 『美少女戦士セーラームーン』から『新世紀エヴァンゲリオン』へと至る盛り上がりと、1990年代半ばから始まった放送本数の増加は、ブームと呼ぶことのできる活況であったということはできる。だがその一方で、テレビの中におけるアニメの地位はどんどんニッチな方向へと進んでいったのである。
 それは内容が、というよりも、テレビの求める視聴率、スポンサーとアニメが完全にミスマッチになってしまったということだ。たとえば、テレビ東京の『スクールランブル』が第二期『同 二学期』は深夜枠になったことが象徴するように、コストのかかる夕方よりは、深夜で放送したほうがビジネスとして効率がいいという状況が出来上がってしまったということだ。

 2006年にピークを迎えた放送本数は、そこから減少に転じる(グラフ)。
 この時期からDVDセールスも減って、90年代半ばから続いた「パッケージでリクープというビジネスモデル」の転換期を迎えることになった。だが、新しいビジネススキームはなかなか見えてこない。
 また、子供向けのホビーものなど商品主導で番組が決まっているものを除けば、旧来のスポンサー付きでTV放送だけで完結するビジネスモデルへも戻ることはできない。アニメは視聴率が低いから、広告主にはもう好まれなくなっているのだ。
 テレビ欄を手がかりに、テレビとアニメの関係を追ってきた本連載も、今回でほぼ終了だ。2006年以降はまだ大きな動きが起きていない。そして、テレビアニメが今後どういう方向に進んでいくのか、その先はまだ見えない。
 次回は連載全体を振り返りつつ、テレビアニメの先を想像して締めくくりとしたいと思う。