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消えるTVアニメのセル画 残るは「サザエさん」だけ

2007年08月29日

 テレビアニメを長年支えてきた、透明フィルムに手で描く「セル画」が近々姿を消しそうだ。コンピューターによる制作が主流になり、いまやセル画によるテレビアニメは放送39年目の「サザエさん」(フジ系)だけ。地上デジタルハイビジョン放送への移行も控え、風前のともしびだ。(アサヒ・コム編集部)

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プレゼントされるセル画=東京都世田谷区の長谷川町子美術館で

 サザエさんのセル画が東京都世田谷区の長谷川町子美術館の「39(サンキュー)サザエさん展」(9月2日まで)で配られた。ジャンケンに勝てば、セル画がもらえる趣向。手にした静岡市の高城清子さん(59)は「手描きのセル画がこんなにきれいだとは」。

 従来のテレビアニメは、セル画を重ねて撮影し、制作されるものだったが、「ちびまる子ちゃん」(フジ系)が99年に、「ドラえもん」(テレビ朝日系)が02年にコンピューターによる制作に変わるなど、残るはサザエさんのみになった。

 サザエさんを制作するエイケン(東京都荒川区)はセル画にこだわり続ける。田中洋一部長は「セル画の映像は微妙に線が揺れ、温かみのある画像になる。それが視聴者に安心感を与える」。

 1話で約1400枚のセル画を使い撮影される。フィルムを回す過程でも微妙な揺れが生じ、味わいを深めるという。

 ハイビジョン映像は精細な映像を表現できる半面、セル画との相性は良くない。静電気で付いたチリが見えたり、厚みによる影で輪郭がぼやけたり、色のばらつきが見えたりするという。

 田中さんは「視聴者からサザエさんは他に比べ映像がきたないと苦情が来れば、セル画を断念せざるをえない」という。

 さらに業界のデジタル化の中で、セル画を描ける人材も高齢化し、不足気味だ。サザエさんを制作するのはエイケンなど3、4社。約120人が携わるが、国内でまかなえず、全体の20〜30%は中国で描かれている。

 セル画専用の絵の具もピンチだ。大手の太陽色彩(東京都板橋区)はピーク時に月2千万円あった売り上げも、今や50万円だという。北村繁治社長は「日本の文化。蓄財を切り崩しても絵の具作りを続けたい」と話す。

 サザエさんは朝日新聞でも長期連載した。

   ◇

 〈セル画〉 アニメーション制作用に、透明のシートに絵の具で描いた絵。考案された当初、材質がセルロイドだったためにセル画と呼ばれる。背景を描いた紙の上に、数枚のシートを重ね、動きのある部分のみを差し替えて、16ミリや35ミリフィルムなどで撮影する。アニメファン向けにセル画を販売する店もある。

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