The Wayback Machine - https://web.archive.org/web/20040622141024/http://hirahata.com:80/med/internal/otiru.htm

絞め技で「落ちる」のはなぜ?
柔道の絞め技や、スリーパーホールドという技をかけられると、 |
人間は、割合簡単に(一過性に)意識がなくなります。 |
(俗に「落ちる」と言います。) |
そこで、今回は、何で「落ちる」のか、医学的側面から |
お話したいと思います。 |
上記の技は、ごく簡単に言えば、頸(特に動脈)を絞める技です。 |
(基本的には気道は絞めないはずです) |
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実は、頸動脈の、頸動脈洞という場所には、 |
「圧受容器」といって、血管の圧力を感知するセンサーがあります。 |
上記の技は、そこに圧力をかけているのです。 |
それがどう「意識喪失」につながっていくのかというと…… |
頸動脈洞の圧上昇 |
↓ |
圧受容体が感知 |
↓ |
舌咽神経という神経がそれを延髄の孤束核
という部分に伝える |
↓ |
孤束核から、迷走神経背側核へ伝えられる |
↓ |
迷走神経が興奮する |
↓ |
心臓の洞房結節や房室結節という所へ伝えられ、
それらの働きを抑える |
↓ |
徐脈(脈拍が少ないこと)になる |
↓ |
血圧が下がる |
↓ |
脳幹に行く血が少なくなり、
脳幹での酸素の量が少なくなる |
↓ |
意識がなくなる(落ちる) |
この一連の現象のことを、頸動脈洞反射と言います。 |
この反射は、上室性頻拍という、 |
心房の脈拍が異常に増えた状態の時にも、利用され、 |
頸動脈マッサージと呼ばれます。 |
○解剖学メモ
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頸動脈洞とは、内頸動脈の起始部のこと。 |
ややふくらんでおり、動脈壁、特に中膜がやや薄く、 |
外膜には求心性(知覚)神経線維(第IX脳神経:舌咽神経)が |
分布する。 |
参考図書:病態生理できった内科学 Part5
五幸恵著 医学教育出版社
解剖学講義 伊藤隆著 南山堂