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柔道の絞め技や、スリーパーホールドという技をかけられると、
人間は、割合簡単に(一過性に)意識がなくなります。
(俗に「落ちる」と言います。)
そこで、今回は、何で「落ちる」のか、医学的側面から
お話したいと思います。



上記の技は、ごく簡単に言えば、頸(特に動脈)を絞める技です。
(基本的には気道は絞めないはずです)
 実は、頸動脈の、頸動脈洞という場所には、
「圧受容器」といって、血管の圧力を感知するセンサーがあります。
上記の技は、そこに圧力をかけているのです。
それがどう「意識喪失」につながっていくのかというと……

頸動脈洞の圧上昇
圧受容体が感知
舌咽神経という神経がそれを延髄の孤束核
という部分に伝える
孤束核から、迷走神経背側核へ伝えられる
迷走神経が興奮する
心臓の洞房結節や房室結節という所へ伝えられ、
それらの働きを抑える
徐脈(脈拍が少ないこと)になる
血圧が下がる
脳幹に行く血が少なくなり、
脳幹での酸素の量が少なくなる
意識がなくなる(落ちる)

この一連の現象のことを、頸動脈洞反射と言います。
この反射は、上室性頻拍という、
心房の脈拍が異常に増えた状態の時にも、利用され、
頸動脈マッサージと呼ばれます。

○解剖学メモ
頸動脈洞とは、内頸動脈の起始部のこと。
ややふくらんでおり、動脈壁、特に中膜がやや薄く、
外膜には求心性(知覚)神経線維(第IX脳神経:舌咽神経)が
分布する。
参考図書:病態生理できった内科学 Part5
五幸恵著 医学教育出版社
解剖学講義 伊藤隆著 南山堂

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