徴用工訴訟、5月以降弁論 日本企業側へ書類送付手続き

ソウル=鈴木拓也
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 韓国で元徴用工や遺族ら85人が日本企業17社を相手取り、計86億ウォン(約8億3千万円)の損害賠償の支払いを求めて6年前に起こした訴訟をめぐり、ソウル中央地裁が、弁論を始めるために必要な訴訟書類を企業側に伝えたとみなす公示送達の手続きを取ったことがわかった。手続きは16日付で、効力が発生する5月18日以降に弁論が始まる。

 元徴用工訴訟では、韓国大法院(最高裁)が2018年秋に相次いで新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業に賠償を命じた。判決は確定し、日韓関係が悪化するきっかけとなった。ほかにも韓国内で係争中の元徴用工訴訟はあるが、これだけ多数の日本企業を一度に相手取った集団訴訟が審理されるのは初めて。

 大法院のウェブサイトなどによると、原告らは15年5月、戦時中に日本本土の工場に強制動員されたとして、三菱重工業日本製鉄三井造船(現・三井E&S)、JX日鉱日石エネルギー(現・ENEOS)、住友金属鉱山三菱マテリアルなど17社を相手取り訴訟を起こした。

 訴訟関係者によると、6年前に地裁は訴状を受理。日本企業は訴状を受け取り、原告の訴えを認めないとの答弁書を地裁に提出した。ところが、地裁が弁論開始に必要な書類を企業に送る際に、日本側が和訳資料の不備などを理由に拒んだり、原告側弁護士が交代したりして手続きが滞った。

 地裁が今回、原告側が修正した請求趣旨など、審理開始に必要な書類を企業側に伝えたとみなす公示送達の手続きを取り、裁判は動き出す。三菱重工業は「公示送達があったことは把握している。これまでと同様、日本政府と適切に連携して対応していく」、日本製鉄は「本訴訟では当社の主張を尽くし、正当性を明らかにしていく」、三井E&Sは「内容を確認していないので、コメントできない」としている。(ソウル=鈴木拓也)