小選挙区比例代表並立制の25年 統治機構改革という骨太な議論を

古賀伸明・元連合会長
古賀伸明氏=内藤絵美撮影
古賀伸明氏=内藤絵美撮影

 8月下旬から自民党内の政局は目まぐるしく動き、9月3日、菅義偉首相(当時)は突然退陣を表明し、自民党総裁選を迎えた。

 直後に衆院選が行われるという極めて異例な事態の中で、総裁選は自民党にとっては「選挙の顔」選びとも絡む、また、その勝利者が首相となり、すぐ総選挙に突入することから、国民の関心も従来になく高まった。総裁選のメディアの露出で、自民党一色となったと言っても過言ではない。

 総裁選に勝利をおさめ、内閣総理大臣に就任した岸田文雄氏は、所信表明演説と代表質問だけを行い、10月14日に衆議院を解散し、現在10月31日の投開票に向けた衆院選も終盤になっている。

 この時期、総選挙の終盤情勢を分析する自信はなく、少し異なる角度から課題を提起してみたい。

政権交代可能な政治を目指した小選挙区制

 現在の衆議院議員選挙は小選挙区比例代表並立制であるが、以前は1選挙区から複数人が当選する中選挙区制であった。1980年代の後半、リクルート事件など金権腐敗政治への不信が極まっていた時期に、政権交代の不在と緊張感の喪失などが日本政治の欠陥とされ、衆議院への小選挙区制導入が提示された。

 93年には政治改革を巡って自民党が分裂、日本新党の細川護熙代表を首相とする非自民政権が誕生した。94年に細川首相と当時野党の自民党・河野洋平総裁が小選挙区制で合意し、新制度での初めての総選挙が96年10月に行われた。それからちょうど25年、四半世紀である。

 この選挙制度改革は、政権交代可能な緊張感ある政党・政策本位の政治体制を目指した政治改革の一つであった。それ以降、確かに2度の政権交代は起きたが、2012年から自公連立政権が続いている。

 このような状況から、当時の政治改革そのものを疑う声も聞こえる。しかし、この課題はいくつかの切り口から論じる必要がある。

選択肢として認められる野党へ進化を

 もちろん第一は、1強多弱という言葉が表すように、選択肢になりうる野党の不在であった。…

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元連合会長

1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。