ソウル事故 専門家“胸や腹強く圧迫 立ったまま意識失ったか”

韓国ソウルの繁華街イテウォンでの事故について、日本救急医学会の理事で日本医科大学付属病院の横堀將司 高度救命救急センター長は、多くの人は胸や腹を強く圧迫されて、呼吸や血液の循環が難しくなり、立ったまま意識を失って亡くなったのではないかという見方を示しました。

横堀センター長は「胸やおなかが強く圧迫されると、呼吸しにくくなるほか、胸の中の圧力が高くなって、心臓から送り出された血液が戻りにくくなり、全身の血液の循環が悪くなる。『外傷性窒息』と呼ばれているが、呼吸と血液の循環の不全によって、低酸素や低血圧になって命を失うケースが多かったのではないか。立ったままでも胸と背中の両方の側から力が加われば、意識をなくしたり血圧が下がったりすることは十分考えられる。倒れる場所もないくらい狭い空間だったと思うので、立ったままで意識を失い、命を失ってしまった状況が考えられる」と述べました。

また「現場にいた人たちは長い時間圧迫を受けていた可能性がある。体重60キロくらいの人だと、体重の3分の2くらいの力が30分とか1時間かかれば呼吸や血液の循環不全が出てくる可能性があるとする研究もある。あの密集した現場では、救助も入りにくい状況だっただろうし、すぐに救命処置を行うのは難しかったと思う」と指摘しました。

そのうえで横堀センター長は、2001年に兵庫県明石市の歩道橋で花火大会の見物客が折り重なって倒れ、11人が死亡した事故でも、「外傷性窒息」で亡くなった人がいたとしたうえで、「いま感染症の予防のためにあまり密にならないよう呼びかけているが、密集を避けることで、今回のような事故の予防にもつながるのではないか。狭い空間に大勢の人が集まる場所は避けること、警備員がいても坂道や階段などでは人と人との距離をなるべく詰めないように意識することなど、日常生活で注意することが大事だ」と話しています。