ネズミのパントテン酸欠乏実験を行ない, その経過中に現われる主要症状について観察し, 下記の成績を得た。
1) ネズミの尿中パントテン酸排泄量は, 実験開始当日から減少し始め, 数日後には早くも欠乏症状を呈しているネズミの排泄量とほぼ同程度にまで下ってしまう。
2) 次いで体重増加の停止,
白毛
への赤褐色の色素沈着が始まる。ついで脱毛 (時に眼鏡様眼), 脂漏性皮膚炎, 神経症状が現われ, その後化膿性疾患で突然死を来たすものが多い。黒毛のネズミでは
白毛のネズミの脱毛の始まる時期から白毛
化が始まるも脱毛はない。
3) 本症に見られる神経症状に2型あり, 季節による影響が顕著なので, 夏型と冬型とに分類する。前者は末梢神経の知覚過敏 (その他脱毛, 脂漏性皮膚炎) を主とし, 後者は錐体外路性症候群を主とし, 筋緊張亢進と摂食時の震顫増強のため飢餓に陥り, 急速に衰弱して死亡する。
4) 血清蛋白像では, 総蛋白量とγ-グロブリン濃度の減少が著明である。
5) パントテン酸欠乏シロネズミに, 実験当初から毎日チロジンの大量経口投与を行なって症状, 特に神経症状を観察してみると, 対照パントテン酸欠乏ネズミの症状との間に差がない。パントテン酸はチロジン代謝に無縁であることを示すものと思われる。
6) パントテン酸欠乏症にみられる主要症状群を, アセチル化の障害で一元的に説明しようと試みた。
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