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つい先日、アメリカ人男性とのご結婚を発表された演歌歌手の長山洋子さん。筆者の記憶によればニッポンにおける演歌歌手で異国人男性とこのような形になったのは洋子さんがお初?のような気がしないでもない。なにはともあれ、ニッポン女性の耐える&忍ぶココロを切々と歌いあげる演歌歌手にもグローバル化の波(←黒船?)がやってきた!ということでいいのだろうか。(笑)とにかくオメデタイお話でゴザイマシタよね。

さて、長山洋子さんの話題になると、必ずと言っていいほど引き合いに出されるのが…

元アイドル歌手

このご経歴である。彼女は1984年4月1日にビクターレコードより「春はSA・RA SA・RA」というポップスでデビューしたのだが、この楽曲によるデビューも土壇場になり決まった!なんて逸話もちらほらで。なんでも準備段階では、洋子さんが幼少の頃から嗜んでいたという民謡で、その鍛えまくったノドを十二分に生かせるような演歌でのデビュー…という話が企てられていたとも聞く。コレを考えるとちょっとばかりの遠回りはしたけれども♪どっちにしても~どっちにしても~いずれは演歌歌手になる運命は決まっていた…ということになるのか。

そんなワケで今回はそんな彼女がアイドル時代に放ったあのナツウタをレビュってみたいと思うのでありまする。

表題の「ゴールド・ウィンド」は長山洋子さんのシングル第5弾として、1985年8月5日に発売されたチューンである。この時代の洋子さんは…

新人賞レースではそこそこの成績は残す
NHK「レッツゴーヤング」のサンデーズメンバーとして選出

と…決して悪くない活動状況。しかし「これぞ!」と言えるような大きなヒット曲には恵まれずにチャートや人気面でも消化不良気味。所属していた事務所はバーニングなのだが、ここは石野真子さんや小泉今日子さんという大物アイドルの育成に成功したプロダクションである。その割にシングル第2弾「シャボン」の後になかなか新曲が出ないという、アイドルとしては異例の長いブランクがあったりで。そしてなんとなく路線が定まりきらないような曲調のチューンを右往左往しながら歌唱していた…それがこの頃の長山洋子さんだったように思う。

そんな彼女にふたたびのテコ入れを!そんなプッシュ体制?により生まれてきたのが、表題の「ゴールド・ウインド」だったのである。なんせこの楽曲はねぇ…作家陣からしてケタ違いの気合が入ってるの。

作詞&作曲:飛鳥涼

ほらね。このお方は言うまでもなく…チャゲ&飛鳥の飛鳥さんである。

デビューしてから1年以上が過ぎ去り、そろそろトップ20に食い込むようなヒット曲の1つや2つは欲しい!ソレが出ないとアイドル歌手としての洋子はジ・エンドを迎えてしまう~!といった、要は‘ぷち断末魔’ちっくな叫びをカマさなければならない崖っぷち状態の洋子さん。そんな彼女に必要だったのは、作家陣だけで話題になるくらいの強力盤…ソレに他ならなかったのでありまする。

そして事務所やレコード会社が決定したこの新路線には洋子さんも覚悟をキメたのである。その覚悟が…

腰近くまであった自慢の長い髪をバッサリ

コレである。おそらくこの変身は同じ事務所の先輩、キョン2のアレを見習って「夢よもう一度!」状態…藁にもすがる想いだったのか、おそらくは。

そんな変身に合わせるかのように、この楽曲の歌詞には…

目覚めた、生まれる、何かが起りそう

と…新しい何かが産声をあげるかのような、そんなお言葉群がてんこもり。いわばこの楽曲は…

新生・長山洋子誕生小唄

と化した徹底ぶりを見せたのである。

曲調だってこれまでの洋子さん楽曲とは全く違う、実に垢抜けたソレ。当時の最新鋭を往っていたとおぼしきシンセサウンドをこれでもか!と駆使したキラキラ感のある仕上がりっぷり。おそらくは当時、シンセサイザーを使って表現できたであろうその全てをこの1曲に集約しました!と言わんばかりのハデハデ加減がこの曲のアレンジにおける特徴の1つとなっているのである。

こうしたキラキラサウンドに乗り…

♪幻のあの島で
 麗しの美女が目覚めた
 さぁさぁ夏はこれから
 生まれるよ 生まれるよ
 ゴールドウィンド ゴールドウィンド

と歌い始める洋子さんは「春はSA・RA SA・RA」や「シャボン」などで、どこか地味で控えめな印象の少女からは見違えるほどに…ひと皮プリっとむけたビジュアルでのご登場。まぁ、この「目覚めた」「生まれた」などがしこたまの歌詞だものねぇ。これまでと同じ彼女が唄ってもサマにならないったらありゃしない!そんなチューンだったとも言えるか。

♪甘い蜜を抱き寄せながら
 飛んで火に入る夏が来る

♪小麦娘がI LOVE YOU
 あなたの瞳 メロウタッチ

もう♪ナツナツナツナツココナツ~といった世界観が炸裂しまくる歌詞。もう「夏」以外のなにものでもありません!と言わんばかりにナツを彷彿とさせるお言葉を散りばめてくれた飛鳥涼氏。飛鳥氏と言えば80年代アイドルに書き下ろした楽曲として…

「DEAR~コバルトの彼方へ~」 荻野目洋子
「一億のスマイル」 酒井法子
「花をください」 中江有里
「MIDNIGHT TAXI」 中山美穂
「おんなになあれ」 森川美穂
「フィルムの向こう側」 南野陽子
「人見知り」 畠田理恵

などなど。まぁ、レコ売上的に突き抜けた&有名なのと言えば、光GENJIが放った一連のヒット曲群ってことになるのだけれどもネ。さてさて...洋子ちゃんの「ゴールドウィンド」に話を戻しませう。
 
♪青い地球のどこかで 何かが起りそう

何かが起りそう…コレはまさしくアレなのよん。そう…

「長山洋子は変身します」

コレを高らかに宣言するためにお膳立てされたお言葉…ソレに他ならないのでありまする。青い地球のどこかで…そうよ!ソレはココで勃発するのよ。ホラっ、アタシをご覧なさい!麗しの美女として生まれ変わった長山洋子よ、オッホッホッホッホッホ!と…高慢ちきに高笑い。(笑)

この曲は間違いなく…洋子さんの変身プロジェクトを踏まえて綿密に作られた企みチューン。これ以外のナニモノでもないようである。

でもアピールするのはこの変身劇だけではなくってよ。デビューの頃からその歌唱力には定評があった洋子さんのソレをご披露する場所だってちゃんと用意されていたんだから。

ゴールドウィ~ン↑ィ~↓ィ~ン↑

なにこのヘンな表記。(笑)
でもコレを見てその意味が手に取るように分かる方は、かなりの洋子通もしくは懐アイドル通なのかと思われ。でもこんなスゴイ音階のメロをその音程を狂わせることなく見事に唄えたアイドルって…当時、星の数ほどいたアイドルちゃん達をざっと思い起こしてみたって、その絶対数はそうそう多くはなかったハズ…と確信するもの。そこはさすがの洋子さん…民謡で鍛えた絶対音感でこんな難解な部分だってサラリとやってのけたのでありまする。

この曲はオリコン最高74位、1.0万枚を売り上げて、ひとまずは100位以内にチャートインする結果と相成った。ただ楽曲がハデだった割にはその順位はちと地味に収まってしまったか。本来的にはこの売上だと番外編!でのご紹介になるのだけれども、洋子さんは今でも現役バリバリだし、こちらでも問題ないっすよね。

なにはともあれ…ここまでこの曲に関しては褒めちぎりまくりのワタクシメ。でも、たまにはちょっとツッコミも入れておかないとね。それじゃあ「ズバリ言うわよ!」。このチューンで残念だったこと、それはね…

キレの悪いフリツケ

コレだったのでありまする。たしかサンデーズ在籍時にも「踊りが苦手」と悩まれていた洋子さん…この曲を唄った時のフリツケも、なんとなくぎこちなさや恥じらいが残るソレというかなんというか。せっかくの華麗なる変身だったのだもの。ソレに合わせるかのように、もうちょいハデにキビキビっとキメて「新生・長山洋子」を更にアピールしてくれたら…。この曲はチャートをもっともっと駆け上がったのではないか、そんな風に感じたりもするのである。そこら辺りのアピール不足が74位という、実に中途半端な位置へと留まらせてしまった原因だったのかも?などと考察する筆者なのでありまする。でもこの曲を唄うにあたり髪をバッサリしたのは大正解だったかと思われ。

ただ、その寸止まりによるものなのか、この曲以降の洋子さんは…

「夢うつつ」
「雲にのりたい」

などの歌謡曲路線に逆戻り。黛ジュンさんのカバー作品だった「雲にのりたい」では、そのタイトルに合わせて気球に乗り、ガクガクブルブルな怖い思いをしながらの大キャンペーンまでをも展開したのに…こちらもあともう一息!(オリコン最高35位)という位置で寸止まりを喰らってしまったのである。そこまでガンバってもデビュー曲の売上だった4.8万枚には届かず仕舞いだったりで...。ブレイク前の彼女はかなりの不遇モードだったようでゴザイマス。それでもスタッフに恵まれた洋子さんは…

♪さぁさぁ夏はこれから

もとい…

「さぁさぁ洋子はこれから」

と言わんばかりのネバー・ギブアップ&プッシュプッシュプッシュの大攻勢。そしてデビューしてから2年と6ヶ月が経過した頃に‘女神のお歌’で遂にベストテンヒットをカマし、名実ともにトップアイドルの仲間入りを果たした洋子さんだったのでありまする。

☆作品データ
作詞・曲:飛鳥涼(1985年度作品・ビクターレコード)