話題の小説の魅力を担当編集者が語る「編集部に質問状」。今回は、生徒会室に集う高校生の日常をコミカルに描くライトノベル「生徒会の一存」シリーズ(葵せきな著、狗神煌画)です。富士見ファンタジア文庫編集部の担当編集・中村昭子さんにうかがいました。(回答はほぼ原文のまま掲載)
--作品のあらすじについて教えてください
あらすじ……。あってないようなものなのですが、あらすじ。初めての方のためにまじめに説明しますと、主人公はエロゲーとギャルゲーが大好きで「俺はハーレム王になる!」といつも叫んでいる高校生・杉崎鍵です。この説明だけで、女性客の8割方が逃げ出すんじゃないかと心配です。そんな彼が、美少女4人がメンバーという、青少年にとっては楽園のごとき生徒会に加入し、「美少女全員とのハーレムエンドを目指す」ものの相手にされず、空気扱いとなり、日々みんなでダベっているだけの話です。
基本、舞台は生徒会室から一歩も動きません。5人でしゃべっては妄想、しゃべっては妄想しているだけです。この説明でさらに、女性客の残りと男性客までもが逃げ出すんじゃないかと心配です。
--作品の誕生した経緯は
文庫のあとがきなどでも触れられていますが、前作「マテリアルゴースト」終了後に、葵さんが新作としてファンタジーを書いたところ、すごーくシリアスで、すごーく重い作品になりまして。そこで試しに、真逆なコミカルで軽い作品も……ということで「生徒会の一存」の第1話を書いて前担当に渡したら、前担当が食いついたのです。
その後「生徒会の一存」のプロトタイプ(試作品)とも言える作品を書き上げたところで、私が担当を引き継がせていただき、さらに試行錯誤(というほど大げさなことはしていませんが)を重ね、今の形に落ち着きました。編集部で「本当にこの作品を出版していいのか」と話題になったことを覚えています。いろいろな意味で冒険作だったので。
--作品の読みどころは何でしょうか?
読みどころ……これまた難しい質問が。むしろ私が「読者の皆さんに聞きたい」と思うことがたまにあるくらいなのですが。しいて言えば、おもちゃ箱みたいなところでしょうか。あのネタをいじってみたりこのネタをいじってみたり、本の中でラジオ番組やってみたり、ボーイズラブだったり、甘酸っぱい青春だったり、異能力バトルだったり、大河歴史ロマンだったり、すいません後半ちょっと嘘ですが、たくさんの物が詰まっていて、いろいろな楽しみ方が出来る作品なんじゃないかなと思います。
--作者の葵せきなさん、イラストレーターの狗神煌さんについて教えてください
作者の葵さんは、ゲームばっかりしています。それが「生徒会の一存」の内容に生かされていたりするのですが、あれだけやって、いつ執筆しているのか謎です。それと、ひねくれ者と恥ずかしがり屋が同居している人で、「本売れてますよ」とか「原稿面白かったです」とか言っても、なかなかうれしそうにしてくれません。ツンデレなのかもしれません。でも、作品に対する姿勢がしっかりしていて、読者の皆さんにどうしたら喜んでもらえるのかということをいつも一番に考えている……はずです。
イラストの狗神さんは、かわいくてまじめな方です。文章だけでは表現しきれないキャラクターの魅力を、いつも狗神さんがあざやかに形にしてくれるので、とてもありがたいです。「生徒会の一存」は変わったイラストの指定が多い(トンデモ妄想シーンとかキツネとかタヌキとか)ので、大変だろうなあと……。いや、指定してるの私なんですが。
余談ですが、葵さんも狗神さんも小柄できゃしゃです。きゃしゃではないですが私も小柄なので、もし3人で人前に出る機会などがあれば、驚かれるかと思います。「ちっさ!」みたいな。
--最後に読者に一言
おかげさまで、マンガ化、テレビアニメ化決定とトントン拍子に来ております。この作品がすくすく育ったのは、ひとえに読者の皆さんのおかげです。ありがとうございます! 文庫も巻を重ねていますが、「いつ、どこから読んでも面白い」を心がけておりますので、ぜひ気楽にお手にとっていただければ幸いです。一見、女性の方には手に取りにくく感じられるかもしれませんが、そもそも担当が女性なのでご安心を……いや、本当に。
それと、3月19日発売のドラゴンマガジンから、読者の皆さんの投稿企画も開始しますので、ぜひご応募ください。
富士見ファンタジア文庫編集部 中村昭子
生徒会の一存、生徒会の二心、生徒会の三振、生徒会の四散 葵せきな著、狗神煌画 富士見書房 588~609円
2009年3月8日