ボストン・マラソン爆弾テロ(前篇) 「アメリカ国産」チェチェン系犯人の肖像
(WEDGE 2013年04月26日掲載) 2013年4月26日(金)配信
兄弟がチェチェン系であったこともまた、大きな衝撃をもたらした。チェチェン人の多くはイスラームを信仰しており、イスラーム過激派やアルカイダによる組織的テロであるのではないかという議論も沸き起こった【チェチェンの過激派については最終ページコラム参照】。
しかし、結論から言えば、今回の事件はツァルナエフ兄弟による単独犯行だと断定して良さそうだ。
■複雑な生い立ちとアイデンティティ・クライシス?
ツァルナエフ兄弟の生い立ちは大変複雑であり、家族は激動の歴史によって人生を翻弄されてきた。アメリカやロシアの各種報道をまとめると次のようになる。
第2次世界大戦中の1944年、当時、ソ連の指導者だったヨシフ・スターリンは、「敵性民族」として、チェチェン人を含む多くの民族に対して大規模かつ残忍な強制移住政策をとったが、それにより、ツァルナエフ兄弟の祖父母はチェチェンを追われ、キルギスタン(現・キルギス)に移住させられ、兄弟の父・アンゾル氏はそこで生まれた。
だが、1980年代後半のペレストロイカや1991年のソ連崩壊を機に、強制移住を強いられた諸民族の帰還の波が起こり、アンゾル氏もコーカサス地域に移住した。
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