5月16日、政府税制調査会の法人課税ディスカッショングループは、法人税率の引き下げは避けて通れない課題であり、成長志向の法人税改革を行う時だとする改革案を確認した。写真は2011年8月、都内で撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 16日 ロイター] - 政府税制調査会の法人課税ディスカッショングループ(座長・大田弘子政策研究大学院大教授)は16日、法人税率の引き下げは避けて通れない課題であり、成長志向の法人税改革を行う時だとする改革案を確認した。
財源論では、恒久減税には恒久財源を用意することが「鉄則」とし、経済財政諮問会議・民間議員が提案した税収の上振れ分に依存する考えに異論を唱えている。
きょうの会合では大田座長が、法人税改革の総論について座長案を提示した。改革の目的の第一に「立地競争力を高めるとともに、企業の競争力を強化すること」を挙げ、税率引き下げの必要性を明記。全法人の1%に満たない資本金1億円以上の企業が法人税収の6割以上を担っている現在の負担構造を見直し、「広く薄く」負担を求める構造にすべきだと提言した。このことが企業の成長を後押しし新規開業を促す環境作りになるとしている。
財源に関しては、「恒久減税である以上、恒久財源を用意することは鉄則である」と明記。諮問会議で広がる税収上振れの活用には反対する姿勢を明確にした。
もっとも、税収中立について改革案は「必ずしも単年度での税収中立である必要はない」とし、他税目も含む「多年度税収中立」の考えを基本とする方針を明確にした。
会議では、経済財政諮問会議の議員でもある佐々木則夫(東芝取締役副会長)が財源論に反発し異論を唱えたが、他の出席者は座長案を支持。
終了後の会見で大田座長はあらためて、「税収の上振れ分を(改革の財源に)ずっと充てることは考えられない。税収が減少した場合は増税するのか」と反論。「最初の段階でアベノミクスの成果を充てることはあるだろうが、恒久減税に恒久財源を用意せず取りかかることはしない」と明言し、税調としてこの方針を貫く考えを強調した。
「単年度税収中立」であれば、その年の増減税同額の範囲内での改革となる。しかし、法人税改革は中長期の構造改革であり、初年度に成果がすぐ表れるものでもない。2000年代に類似の大胆な法人税改革に踏み切ったドイツでは、税率引き下げに必要な財源の87%を恒久財源となる課税ベースの拡大で手当てした。大田氏は「ドイツの例は参考になる」とも語り、初年度に一定程度の税収上振れ分を活用することまで排除しなかった。
各論では意見対立が際立っていた、受け取り配当などの益金不算入制度、中小法人課税、地方法人課税の外形標準課税拡充について集中的に議論し、中小法人課税と外形標準課税については段階的に是正していく方向性が確認された。
次回の法人課税ディスカッショングループでは、すでに合意がえられている租税特別措置や欠損金の繰越控除制度、減価償却制度、公益法人課税などと合わせて各論の取りまとめ案を提示し、総論と合わせて最終とりまとめを行う。来週中には開催の予定。
最終とりまとめにも、具体的な引き下げ幅や時期については盛り込まない方針。それは内閣が決めることとしている。
(吉川裕子 編集:田中志保)
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