懐かしくなって押し入れから埃を被っているのを引っ張り出して読んでみました。
値段は380円とあります。
昔、竹宮恵子の表紙に惹かれ、中身を全く確認する事なく購入したんですが、家に帰って
読んでみてビックリ。今読めばどうって事ないんですが、当時はその過激さにドギモ
を抜かれたものです。
商業誌では絶対描けないボブとウォルフの×××エピソードを描いた「変奏曲」
外伝が載っているし、栗本薫がジュスティーヌ・セリエ名義で「薔薇十字館」(スゴ
イタイトルだ(^^;))という耽美小説を発表。
「ジュスティーヌ・セリエ略歴」というのが載ってまして要約すると
「1958年、フランスのドーヴィルに生まれる。父はジャン・マリー・セリエ、
調律師、母、マドレーヌ・ラスティニャック・セリエ(なんとなくスゴイ名前だ)。
20才の時に長編「ル・リュイ・クレール」を執筆。第二のサガン?」と「リテラト
ウール」にとりあげられる。作品はいずれも耽美的な少年愛、異常愛をとりあつかっ
たもので云々・・・」
とありますが、日本人が外人名で書いているなどとは夢にも思わなかった当時の純真
な私はフランス名の羅列にただただ煙に巻かれてしまったんですよね。
栗本=セリエだと知ってしまった今となっては上の略歴もギャグ以外の何物でもなか
ったりして(笑)。
中には仏文科の卒論でセリエを取り上げたいので原書を取り寄せたいと当時の編集部
に問い合わせた人がいたそうですが編集部はどの様に対応したのでしょうか。
当時は今と違ってJUNE小説を書く人もいなくて、栗本氏が一人でいくつものペン・ネーム
を駆使して色々と書いておられましたが、地道な布教活動が功を奏してか、今ではJUNEものは
市民権を獲得しつつあります。
他の読み物としては、今その手の雑誌やレディースで活躍中の竹田やよい氏のロック・マンガ、
中島梓氏のエッセイなどがあります。また、少年愛マンガの変換という読み物では水野英子辺り
から始まる同性愛マンガの歴史と共に少年愛マンガの紹介をしていますが、ほんとに数が
少ない。あの頃は探すのが至難の技でしたが、今は氾濫するJUNEものから自分の好みに合うもの
を探すのが大変です。こうなったら自分で書いてやれと小説を書き始めたもののなかなか思う通り
に形にならず歯がゆい思いをしています(^^;)。
2号以降で始まった美形ギャラリーでは美少年の代名詞、ビョルン・アンデルセンやデビッド・ボウイ、
ロビン・ザンダー(知ってる?)、ジルベール、エーベルバッハ少佐(!)の名前等と共に少年然と
していた頃の少女スター、ジョディー・フォスターの紹介があったりして情報量では他の少女雑誌を
抜きん出ていたのではないでしょうか(多少の偏向はありますが)。
他の少女マンガに比べるとかなり濃くて淫靡な雰囲気が溢れていて家でこっそりと開くのさえ
後ろめたい感じがしたのも確かです。今のJUNE誌に欠けているものはこの後ろめたさでしょうか。
JUN創刊に触発された同人作家達が次々と同人誌でJUNEものを発表。この頃の第一次耽美ブームの
出身者に高口里純も谷地恵美子などがいます。やがて既成のアニメキャラをくっつけるアニパロ
やおいがブームとなり、それがJUNE人気に拍車をかけ、今ではアニパロからJUNEものに走る人も
多いそうです。
私がJUNEっぽいものに目覚めたのは、小学生の頃、男装の麗人にはひそかに胸ときめかせていた
ものですが、一条ゆかりのフェイントJUNE「さらばジャニス」(染色体の関係で男の子が女の子
だとわかる話)で男同士のラブ・シーン見ても不潔とか思わなかったし、どう見ても男にしか見えない
オスカルがアンドレと抱き合うシーンには何かゾクゾク来るものがあったんですよね。
しかし、その正体不明のゾクゾクが何かわからず自分でも持て余していたわけですが、なかよしに連載
された高階良子「ドクターGの島」の原作でJUNE文学史上さんぜんと輝く江戸川乱歩の古典
「孤島の鬼」を小学校6年生(!)の時初めてに読んで(何と学級文庫に置いてあった(^^;))目から
鱗で私の探していたものはこれだと確信致しました。
諸戸道雄と蓑浦君の関係に理想的なJUNEカップルの原型があると言っても過言ではないでしょう。
私は、こういう地位も財産も才能もある超美形の男が、何のとりえもない平々凡々で
内向的なしかし、綺麗な男の子(と言っても蓑浦君は25才)を命がけで愛するとい
う設定にすごく弱いんです。ああ、まるで圭と悠季みたい・・ うっとり・・・
この二人の交情が実にきめ細やかに描かれ、純文学の香りさえただよわせていて荒唐無稽な話の中で
その部分だけいい意味で浮いていたものです。
結局、諸戸の片思いに終わったわけですが、大正時代にこういう小説が書かれたという事自体スゴイ
ですね(小学生の分際で読んだ私もスゴイってか(^^;))。まあ、大正デモクラシー全盛で現代に
通ずるような開放的風潮が溢れていたからと思えば納得できますが・・
まだ読んだ事のない若いJUNE読者の方ぜひともご一読をお勧めします。
私などJUNEはおろか「風と木の詩」も「イブの息子たち」も存在しなかった頃この作品に出会い、
J小説というジャンルなど想像だにできない時期に飢えを満たすように何度もむさぼるように読み返した
ものです。
「ドクターGの島」は、蓑浦が女の子にアレンジされていたので(「なかよし」ならそれもいた仕方ないが)
いつか篠原鳥童あたりが原作に忠実にマンガ化してくれないかしら。
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