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タイ洪水:100万人に避難準備指示 「浸水、どこまで」高まる不安

冠水が始まったバンコク国際空港へ向かう高速道路の側道=バンコク郊外で
冠水が始まったバンコク国際空港へ向かう高速道路の側道=バンコク郊外で
水があふれ出した運河沿いの小屋で、状況を見守る地元住民=バンコク北部サイマイ区でいずれも19日午後、西尾撮影
水があふれ出した運河沿いの小屋で、状況を見守る地元住民=バンコク北部サイマイ区でいずれも19日午後、西尾撮影

 【バンコク西尾英之】過去50年で最悪規模とされるタイの大洪水は、政府が下流のバンコク北東部方面につながる水門を開けたことで19日、100万人以上の首都住民が浸水の危険に直面することになった。避難準備の対象となる七つの区は、元々標高の低い湿地帯だ。住民は「浸水慣れ」している面もあるが、洪水被害がどこまで広がるのか不安を深めている。

 「ここまで水位が上がれば浸水は免れないだろう。被害が最小限になることを祈るばかりだ」。工業団地の冠水など激しい洪水被害を受けている北隣のパトゥムタニ県と接するバンコク最北部、サイマイ区で、小規模な運河の水門部をのぞき込みながら住民が話した。

 水面はすでに堤防と同じ高さに達し、積み上げられた数十センチの土のうがかろうじて流入を防いでいる。さらに上流からの水が加わり水位が上がれば、土のうを越えて流れ込むのは必至だ。堤防の内側の土地は、水面よりも1メートルは低い。

 この日午前、バンコクのスクムパン都知事は、七つの区の住民に「洪水の危険が迫った」として、家財道具の持ち出しなど避難の準備を開始するよう求めた。住民の多くは「準備といってもすることはない」と事態の推移を見守る構えだ。だが郊外のサイマイ区でも都市化の進行で、幹線道路沿いには大規模スーパーなど郊外型の商店が軒を連ねる。自動車販売店の従業員は「商品の車を水没させるわけにはいかない」と話し、店頭に土のうを積み上げる作業に追われた。

 対象となる七つの区は在留邦人が集中するバンコク都心部から20キロは離れている。政府は都心部を洪水から守るために、水を都心部の東西に逃がす首都防衛策を策定しており、水門を開くのは、この計画に基づくものとみられる。サイマイ区の会社員、ピーマイさん(55)は「犠牲となる我々には不公平感はぬぐえない」と語った。

 これまで政府は「バンコクは洪水被害を免れる」と繰り返す一方で、スクムパン都知事は「北部や東部の危険は解消していない」と強調して政府に対策を求めてきた。7月の総選挙で圧勝して政権に就いたタクシン元首相派のインラック政権に対し、知事は反タクシンの民主党出身。「政府と都の連携はうまくいっているのか。洪水対策にまで政治対立を持ち込まれてはたまらない」。住民の一人は不信感を口にした。

毎日新聞 2011年10月20日 東京朝刊

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