日銀の国債保有増は危険か? 出口もプロなら対応可能

2014.06.26

 日銀が公表した2013年度の「資金循環統計」の中で、国債等の保有者内訳が話題になっている。日銀が最大の国債保有者になったとして、「金融緩和の出口が難しくなる」「売却の際に金利が急上昇する恐れがある」といった報道もあるが、そうしたリスクはどの程度なのだろうか。

 ここでいう「国債等」とは、国庫短期証券、国債・財融債の合計である。資料によれば、14年3月末の国債等残高は998兆円。保有者の内訳は、金融仲介機関587兆円(構成比58・8%)、一般政府・公的金融機関88兆円(同8・9%)、中央銀行201兆円(同20・1%)、海外84兆円(同8・4%)、家計21兆円(同2・1%)、その他17兆円(同1・7%)となっている。

 まず、注目すべきは、国債等残高1000兆円というものの、一般政府・公的金融機関と中央銀行という、いわば「政府の子会社」で保有しているのが約3割という点だ。

 ということは、連結ベースで考えると、国の借金は実質700兆円とみてよい。日銀の場合、国が日銀保有国債の利払いをしても、それは直ちに日銀からの国への納付金となるので、日銀保有国債については利払い費は発生せず、その分の国債を発行しなかったのと事実上同じになる。

 さて、報道にある「出口が難しくなる」という論調だが、意味不明だ。日銀の金融緩和が「出口」に向かうことは当分ないが、今後、日銀が掲げているインフレ目標に対して実際のインフレ率が上振れしそうになった場合、国債の売りオペが行われるだけだ。

 日銀のインフレ目標は2%なので、仮にインフレ率が2%を超えそうになれば、買いオペの金額を減らし、3%を超えそうになれば、売りオペに転じるということになる。

 その時点で日銀の国債保有額は、今より大きくなっているだろう。このオペが簡単かといえば、そうでないが、絶対に不可能かといわれれば、それほどでもない。F1カーを素人のドライバーが運転することはできないが、熟練したプロであればできるだろう。

 「売却の際の金利急上昇」も、急上昇というのがどの程度なのか曖昧だ。「出口」の近くでは、インフレ率は2%を超えているだろう。そのときの名目経済成長率は4〜5%程度だ。国債金利も4〜5%になっている可能性が高い。

 それは、今の水準からみれば高いが、そこに至るまでの経緯を急上昇といえるのだろうか。ごく短期的に金利が1%くらい変動することはあり得るが、相場とはそういうものだ。

 その場合でも、狼狽(ろうばい)売りなどのよほどのヘマをやらない限り、金融機関の年間収益には大きな影響を与えない。まして、そうした一時的な金利の変動は、国民経済に大混乱をもたらすものでもない。

 こうした愚にもつかない不安を唱えるのは、ここ20年間のデフレ市場で安閑としながらも、儲けてこられた「債券村」の住民だろう。脱デフレになろうとしている今、債券村の住民が、かつての栄光に浸りながら、愚痴をこぼしているとしか思えない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 

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