樹木医学研究
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短報
異なる下層植生の海岸クロマツ林内でのクロマツ菌根の出現頻度
喜多 智靖
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2011 年 15 巻 4 号 p. 155-158

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抄録

海岸クロマツ林の地下部の健全性に関する指標の提案を目指して,異なる下層植生の海岸クロマツ林内での菌根の出現頻度の調査を行った.クロマツ林冠下,下層植生がほぼ見られないAタイプ,自然高500 mmまでの下層植生を主体としたBタイプ,1000 mm以上の下層植生から構成されるCタイプの3種類の林分に,各10ヶ所,合計30ヶ所の調査地点を設定した.各調査地点で,土壌サンプル (10 cm×10 cm×15 cm) 1個を採取した.土壌サンプルより抽出した5 mm以上の根の長さを測定し,その根に形成されていた棍棒型,二叉分枝型などの菌根の数を計測した.その結果,下層植生が侵入した海岸クロマツ林では,個々の根の長さは長くなる一方,土壌容積当たりの根の本数は減少した.土壌容積当たりの菌根密度・根長当たり菌根密度が下がる傾向も示された.下層植生が林内に侵入することで,菌根が減少し,海岸クロマツ林の健全度が低下している可能性がある.

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© 2011 樹木医学会
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