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身もフタもある ご当地マンホール道を歩けば目に入るマンホールのふた。意識してみている人などいないと思いきや、各地を巡って写真を撮るほどの熱心なファンもいるという。彼らを引きつけるのは、地域の名物や名所旧跡などを刻んだバラエティー豊かなデザイン。ここ北陸でも、探してみると地域色豊かなふたがいくつも見つかった。 海の幸競演 珍キャラも日々の暮らしと密接に関わりながら、普段はほとんど一般市民の目に触れることのない下水道施設。マンホールのふたは唯一の「見える下水道」だけに、各市町村が競うように凝ったデザインを取り入れている。 よく見られるのが、ご当地の名物や観光名所などをあしらった図案だ。朝市で知られる石川県輪島市は、魚や野菜を商う笑顔のおばあちゃんを描いて市のにぎわいを表現。同県羽咋市はハマグリと波を配し、千里浜なぎさドライブウェイをイメージしている。 海の幸が豊かな北陸だけに、海産物を描いたデザインも目立つ。富山県氷見市は、地域の代名詞ともいえるブリを採用。同県滑川市はホタルイカの定置網漁の様子を描き、遠景には立山連峰を入れて郷土色を出した。 オーソドックスに市町村の紋章や花を図案化している自治体も多いが、中には「なぜこんな絵をマンホールに?」と首をかしげたくなる変わり種もある。 石川県旧鹿西町(現中能登町)のマンホールには、おにぎりを擬人化したような謎のキャラクターの姿が。調べてみると、かつて町内の遺跡から弥生時代のにぎり飯の化石が出土したという。これを機に、「おにぎりの里」としてまちおこしを続けてきたと知り、ようやく合点がいった。 この鹿西町に負けないほどのファンシーな絵柄を誇るのが石川県旧能都町(現能登町)だ。なぜか、イルカにまたがった少年が描かれている。少年は能都町のイメージキャラクターで、縄文人という設定らしい。イルカの骨が大量に出土した地元の真脇遺跡にちなんでいるようだ。 日本全国で多種多様な柄があるマンホールのふた。JIS規格では円と直線を組み合わせたシンプルな模様が示されているが、これはあくまで参考だという。ふたのメーカーでつくる「日本グラウンドマンホール工業会」の平原正規事務局長代行は「JIS規格のものもわずかに残っているが、9割方の自治体は独自デザインを使っている」と説明する。 ただこのように市町村が個性を出すようになったのは1980年代ごろから。それ以前は、JIS模様の基になった「旧東京市パターン」、名古屋市のデザインの流れをくむ「名古屋市パターン」などが広く普及し、それほどバリエーションは幅広くなかった。下水道のイメージアップを図るべく、80年代に当時の建設省が呼び掛けたことから、全国に「ご当地マンホール」が広まったという。 軽量化進み40キロに半減Q:マンホールのふたのサイズは?A:下水道用では直径60センチが一般的。鋳鉄製でかなり重く、かつては80キロを超すふたもあった。今は軽量化が進み、強度は向上しながら重さは半分の40キロほどになっている。 Q:耐用年数は?A:車が通って磨耗が激しい車道は15年、そのほかの場所では30年が目安。 Q:デザイン重視で安全性に問題はないの?A:単に地域の個性を出すだけでなく、タイヤが滑らないよう線に強弱を付けるなど、安全に配慮したデザインが求められている。 Q:丸いふたが多いのはなぜ?A:四角いふただと角度によって下水管の中に落ちてしまう。丸いと中に落ち込んでいく心配がない。 旅の記念 足元も観察マンホールをこよなく愛する記者 小椋由紀子(29)きっかけは何だったか、かれこれ5年ほど、各地で心ひかれたマンホールの写真を撮っている。誰にも明かしたことのない趣味だったのに。「マンホール特集」と聞いたら、黙っていられない。 旅先では景色を眺める時、無意識に足元も観察。これぞ、というものを発見すると、連れの友達に「ちょっと先行ってて」と断り、こっそり撮影する。 歴史を感じさせる渋いものから、ポップでかわいいものまで、地面に思いがけず気の利いたデザインを発見した時の喜び。版画や切り絵の雰囲気もある。誰が何を思って作ったかは知らないが、街の自慢が小さな丸いふたに詰め込まれている。 全国の愛好家のサイトを見ると、個性的なマンホール写真がたくさん並んでいる。とても制覇できそうにないところもいい。地味だけど、その土地を歩いて初めて見つかる記念品。探し始めると案外くせになるかも。 担当・佐藤航、小椋由紀子 ※次回は23日付Love&Sex。独身記者の「街コン」体験記です。 PR情報
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