2010年11月5日16時0分
どこかとぼけた名前の投稿動画サイト「ニコニコ動画」が、若い世代を中心に存在感を増している。「ネットは無料」の意識が強いなか、有料会員が100万人を超えたのだ。ネット上の映像に向け、感じたままのコメントを書き込めるこのサイト、人気の秘密を探ってみると、年配世代にもなじみ深いメディアの原初の姿が見えてきた。
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「いよいよだな」「仕分けにいくらかかってんの」「AとB(の会場)、レンホウはどっち?」……パソコン画面の映像上を、テロップのように文字が流れていく。
10月末にあった事業仕分け第3弾。「ニコニコ動画」(ニコ動)は朝から夕方までずっと生中継していた。昼休みで全員が席をはずしている間も、カメラは無人の会場を映し続けていた。
「説明長くね」「内容難しい」。コメントは中継を見ている「視聴者」の反応だ。つっこみ、笑い、拍手。コメントは重なりながら右から左へ。ときには映像が文字で覆いつくされそうになることもある。
2006年末に始まったニコ動は、ユーチューブと同様、個人が投稿したおもしろ動画や、アニメを元にしたパロディー作品などが多く流れるサイトだ。歌声合成ソフト「初音ミク」は多くの曲やイラストが投稿され、CDにまでなった。07年からは「公式生放送」を開始、小沢一郎氏ら政治家を登場させた。
■反応が返る場所
日本では「ネットの情報はタダ」という意識が強く、サーバーなどの運用コストが大きい動画サイトで収益を出すのは難しいと言われる。ところがニコ動は先月、月525円支払う有料会員が100万人を超えた。今年1〜3月期決算で初の黒字も出した。無料会員との違いは回線が混雑しても快適な環境で動画が見られることなど。特典はささやかなのに、この1年、急カーブで有料会員が増えている。