【英総選挙2019】 各党代表者がテレビ討論 焦点はやはりブレグジット

(L-R) Labour's Richard Burgon, SNP leader Nicola Sturgeon, the Chief Secretary to the Treasury Rishi Sunak, Brexit Party leader Nigel Farage, Plaid Cymru leader Adam Price, Green Party co-leader Sian Berry and Liberal Democrats leader Jo Swinson

画像提供, MATT FROST/AFP via Getty Images

画像説明, 左側からリチャード・バーゴン影の法相(労働党)、SNPのニコラ・スータージョン党首、リシ・スーナック財務長官(保守党)、ブレグジット党のナイジェル・ファラージ党首、ウェールズ党プライド・カムリのアダム・プライス党首、緑の党のシャーン・ベリー党首、自由民主党のジョー・スウィンソン党首

イギリス各党の有力議員が1日、12日の総選挙に向けたテレビ討論大会に参加し、欧州連合(EU)離脱や国民保健サービス(NHS)、テロ対策などについて激論を交わした。

ITVが放送したこの討論会には、与党・保守党からはリシ・スーナック財務長官が出席。保守党が勝利した場合、EUとの合意なくEUを離脱する案を取り下げるよう他党議員から強く求められたが、明言を避けた。

また、最大野党・労働党のリチャード・バーゴン影の法相は、同党が約束しているブレグジット(イギリスのEU離脱)をめぐる2度目の国民投票を行う案について追及された。

イギリスは2020年1月31日にEUを離脱する予定だが、イギリス議会は離脱条件をまとめたEU離脱協定案をまだ承認していない。

ボリス・ジョンソン英首相は12日の総選挙で過半数議席を獲得し、ブレグジットを実現したい一方、野党各党は国民投票やブレグジットの中止などを掲げている。

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ブレグジットめぐり衝突

司会者のジュリー・エッチンガム氏はバーゴン氏に、労働党が勝利して2度目の国民投票が実現した場合、残留と離脱のどちらに投票するつもりかと尋ねた。

これに対しバーゴン氏は、「労働党政権が(EUと)離脱協定を結んだ後に地元の労働党員と話し合い、どういするか決めたいと思う」と話し、直接回答しなかった。

また、同党のジェレミー・コービン党首が2度目の国民投票について中立を保っていることを擁護。コービン氏は「選挙のために国民を利用するのではなく、イギリスをひとつにし、分裂をいやすつもりだ」と語った。

これに対し野党・自由民主党のジョー・スウィンソン党首は、コービン氏の中立は「党首ではなく見物人の立ち位置だ」と批判。しかしバーゴン氏は、自由民主党のブレグジット中止案は「あまり自由主義的でも、民主主義的でもない」と反論した。

2度目の国民投票を支持するスコットランド国民党(SNP)のニコラ・スタージョン党首は、保守党が「何としてでもブレグジットを実現しようとして」いることも、労働党が「どちら側に立つかすら決められない」ことも、「ひどい有様だ」と批判した。

その上で保守党のスーナック氏に対し、保守党がEUとの通商交渉に失敗した場合、合意なしブレグジットを回避するよう求めた。

スーナック氏は、「すでに協定案はできあがっている」とした上で、ブレグジットで焦点となっているのは離脱協定であり、通商協定ではないと訂正した。

さらに、通商協定は「将来取り決めるもの」だと説明し、「その未来にたどり着くには」2016年の国民投票の結果を尊重し、EUを離脱するしかないと話した。

Julie Etchingham

画像提供, Amy Bramall/ITV via Getty Images)

画像説明, 司会を務めたジュリー・エッチンガム氏

緑の党のシャーン・ベリー共同党首は、「国民に是非を問う」ことで「より民主的」にブレグジット手続きを終えるのが最善の方法だと述べた。

一方、ウェールズ党プライド・カムリのアダム・プライス党首はスウィンソン氏と呼応する形で、EU離脱の中止を訴えた。

プライス氏は、EU離脱による経済的な影響によって貧富の差が広がり、「我々の抱える問題の解決にはならない」と指摘した。

こうした中、離脱強硬派ブレグジット党のナイジェル・ファラージ党首は、2度目の国民投票は「さらなる分裂と対立」を生むと述べた。

ブレグジット党は離脱を推進するとともに、来年末までにEUと通商協定が結べない場合には、世界貿易機関(WHO)の定めるルールに従うべきと訴えている。

トランプ米大統領への「ヘイト」

激しいやり取りの中、スウィンソン氏は、ファラージ氏がドナルド・トランプ米大統領を擁護していることを逆手に取ろうとした。

ファラージ氏は、トランプ氏が過去に女性の性器を「わしづかみにする」と発言していたことは「過ち」だと話した。

「(トランプ氏の発言は)下品で粗野で、過ちだった。人はたまにひどいことを口にするものだ」

しかし、ファラージ氏が「もし私たちが全員、酒を飲んだ後の夜遊びでしたことについて、非難されるなら」と話し始めると、スウィンソン氏に「あなたも飲酒後の夜遊びでそういうことをするんですか?」と、さえぎられた。

ファラージ氏はこれに対し、「彼(トランプ氏)はアメリカの大統領で、彼との関係は重要だ。あなたはとても反アメリカ的で、国益よりもトランプ氏へのヘイト(憎悪)を優先させてるのは大きな間違いだ」と反論した。

スタージョン氏も、ボリス・ジョンソン首相がトランプ氏をお手本していると批判した。

これにはスーナック氏が反論し、アメリカとの関係は「安全を保つためにも非常に重要」で、「鼻であしらっていいものではない」と述べた。

ロンドン橋襲撃にも言及

討論大会では、11月29日に英ロンドン中心部のロンドン橋付近で5人が殺傷された事件も議題となった。この事件は仮釈放中の元受刑者が起こしたことから、量刑をめぐる議論につながっている。

スーナック財務長官は、保守党は「刑罰の厳格化」を望んでいると説明。また、ジョンソン首相が事件を政治化しているとの批判に対し、首相が総選挙に際し、「どうやって人々の安全を守るか説明する」のは「義務」だと反論した。

バーゴン氏は、「保守党による議論が、悲劇から労働党を非難するお決まりの政治文句に変わる様子は非常に不愉快だ」と述べた。

「政党に関わらず、イギリスの民主主義はもっと良いものであるべきだと私は思う」

一方、ファラージ氏は、「ジハード主義のウイルスを持っていないと完全に証明できない限り、こういう人たちを刑務所から決して出すべきではない。なのにポリティカル・コレクトネス(政治上の正しさ)がそうさせない」と話した。

保健制度めぐり「言った言わない」

NHSをめぐってはかねて、人員不足や病院での待ち時間の長期化などが問題となっており、国内問題として議論の的となっている。

こうした中、スーナック氏は、保守党がEU後の対米通商協定で、アメリカ企業にNHSへの参入を促そうとしている「根拠のない疑惑」を労働党が作り出したと非難した。

スーナック氏はバーゴン氏に、「NHSに対する本当のリスクとは、労働党の無謀な経済計画だ。投資する資金はなく、週休3日するという馬鹿げた計画だ」と述べた。

これに対しバーゴン氏は、「労働党にはNHSを週休3日にするという案はない」と反論した。

スーナック氏はさらに食い下がり、労働党のジョン・マクドネル影の財務相が週休3日制度は全ての人に適用されると言っていた主張。バーゴン氏はこれに、「そうではない。向こう10年の間に週休3日制度にするアイデアがあり、考慮の余地があると言っただけだ」と答えた。

マクドネル氏は11月、NHSを含む全ての労働者に対し、10年以内に1週間の労働時間を32時間にする計画があると話していた。