中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 中日春秋一覧 > 記事

ここから本文

【コラム】

中日春秋

2008年9月27日

 柳家小三治さんの落語を堪能したのは、おとついの晩。汚染米やら年金問題やら様々(さまざま)に世相を憂いながら笑わせた、『湯屋番』へと続く枕の中で、ひときわ受けたひと言がこれ。「しかし政界には若(わか)旦那(だんな)が多いですなぁ」

▼落語に登場する<若旦那>は頼りない印象があるが、指しているのは言わずもがな、二世や三世、いわゆる世襲議員である。確かに多い。小沢代表はじめ民主党にもいるが、特には自民党だ。最近の総裁、つまり首相がその象徴だろう

▼安倍、福田、麻生と三代も続いたのを見れば、そそっかしい外国人なら、日本ではもう父か祖父に首相経験者がいない限り、そのポストには就けないことになったと勘違いするかもしれない

▼従って麻生内閣が、閣僚の過半が世襲議員の<若旦那内閣>だとしてもそうは驚かない。だが小泉元首相の決断は少々意外だった。政界引退を決めたことより、次男を後継者にするという話が、である

▼もっとも、自身も閣僚経験者の父と祖父を持つ立派な<若旦那>である。「自民党をぶっ壊す」と威勢がよかったが、こういう“党風”は大事に守る気なのだろう

▼世襲議員も有権者が選んだことは間違いない。だが、政治の「家業化」には、さすがに辟易(へきえき)、という空気が強まっているのも確かではないか。あの小三治さんの“名言”には、笑いだけでなく大きな拍手が起きた。

 

この記事を印刷する

広告