WBC辞退イチローの本音

2012年11月23日 10時50分

 来年3月に行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表入りをイチロー外野手(39=ヤンキースからFA)が19日、正式に辞退。日本野球機構(NPB)が発表した。侍ジャパンの2連覇に貢献し、第3回大会でも大黒柱として期待されていたイチローの本音を探ると、今回の不参加は当然の結論だった。この日は黒田博樹投手(37=ヤンキースからFA)の辞退も発表された。これで出場を要請していたメジャーリーガー6人の欠場が決定。本紙既報通り、侍ジャパンは国内組だけで3連覇に臨む。

「ボクの中で第2回大会を終えた時点で3回目の出場は考えられませんでした。今日までその気持ちが変わることはなくこういう形になりました」

 イチローは辞退の理由をこう語った。AP通信も打電する大ニュースだったが、前回第2回大会を戦った一部関係者の中では納得のいく決断として受け止められている。

 当時、スタッフの一人として侍ジャパンに携わった関係者は「あれだけの重圧の中で、もし最後のタイムリーヒットがなければ立場は完全に戦犯扱いだった。日本代表の中で自分にかけられる過度の期待が今回の決断に至った要因の一つだと思う」と話した。

 侍ジャパンのチームリーダーとして日本を連覇に導いたイチローだが、2009年の前回大会では準決勝まで打率わずか2割1分1厘とその役割を果たせなかった。そして今もなお劇的なシーンとして記憶されている宿敵・韓国との決勝戦、延長10回に放った劇的な決勝打がなければイチローの立場は暗転していたことだろう。

 後に「野球人生の中であんなに恐怖を感じた打席はなかった」と振り返ったほどだ。

 それだけに肉体的にも代償は大きかった。チーム合流後、即オープン戦に出場したが4試合目に体調不良を訴え途中交代。精密検査の結果、胃潰瘍と判明し、メジャー9年目で初の故障者リスト入りし、開幕から8試合欠場した。

 また、今回は自身の置かれた立場も違う。過去の2大会はマリナーズで絶対的な存在だったが、現在は野球人生で初のFAで来季の所属先は未定。ヤンキースと再契約したとしてもレギュラーを保障される可能性は低い。新たな競争が待っている。新チームならなおさらキャンプを途中離脱するわけにはいかないだろう。

 10年の214安打以降、2年連続でシーズン200安打に到達せずに米メディから衰えを指摘する声も上がっている。これまでは批判をバットではね返してきたイチローだったが、その自信はないということか。

 イチロー、黒田、ダルビッシュ、青木、岩隈、川崎の不参加は戦力的にマイナスかもしれないが、侍ジャパンはプラス思考で戦うしかない。