第174回(2009年8月19日)

渋谷区立宮下公園のネーミングライツをナイキジャパンが獲得

(田中 洋=中央大学ビジネススクール教授)

 東京都渋谷区の区立宮下公園のネーミングライツ(命名権)をナイキジャパンが獲得した。命名権料は年1700万円で期間は10年。今後ナイキは約4億円を負担して公園改修を進める計画で、9月からも着工が始まる予定という。区の、すなわち公共の施設に私企業がネーミングライツを獲得するということに若干の違和感は拭えず、またホームレス支援団体も反発を示すなか、ナイキの選択は吉と出るか。

米国では90年代からネーミングライツの動きが拡大

 「ネーミングライツ(naming rights)」という企業活動が日本で一般化してきた。これは企業が対価を支払って野球場・スポーツ施設・公会堂など公共施設や場所の命名権を獲得することである。日本でよく知られた例では「味の素スタジアム」(旧名:東京スタジアム)、「日産スタジアム」(同横浜国際総合競技場)などがある。

 ネーミングライツの事例はスポーツ施設だけに限らない。私道である有料高速道路の「箱根ターンパイク」が「TOYO TIRESターンパイク」と命名されたこともある。このようにネーミングの権利を企業に売るさまざまな事例が出てきた。

 米国では90年代からこうした動きが盛んになった。高額な事例としてはアメリカンフットボールのヒューストン・テキサンズの本拠地のネーミングライツが挙げられる。この命名権を獲得したリライアント・エナジー社にちなんで「リライアント・スタジアム」と名づけられた、そのネーミングライツ料は年間1千万ドルとされている(引用1)。

 こうしたネーミングライツの適用範囲が拡大するにつれて、施設に突然聞きなれない企業名がつくようになっても、我々はさほど奇異には感じなくなった。しかし一方で問題が起きていないわけではない。

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