航空機にえい航され浮上するグライダー=福井県坂井市春江町上空(松本正身・関西大学体育会航空部監督提供)

 福井県坂井市にある福井空港はグライダーのメッカ。定期便が就航していないことが使いやすさを増し、滞空に欠かせない上昇気流を得やすい気象上の強みもある。関係者によると、動力のないピュアグライダーの飛行を許可している地方管理空港は他になく、福井県内外の大学の航空部が合宿を張る。航空機のえい航によってグライダーを浮上させ、自由に高度を決められるメリットを生かし、学生らは日々腕を磨いている。

⇒管理者の福井県、利活用に奔走

 福井空港は1966年に開港。福井―東京を往復する定期便があったが、73年に石川県の小松空港がジェット化されると福井空港の利用客は激減し、76年に定期便は休航となった。2003年に拡張整備計画断念を表明してからは、九州や東北などと結ぶチャーター便を運航したが、それも09年度でなくなった。

 グライダー利用は開港当初から活況。日本学生航空連盟の訓練所が敷地内にあり、県内外の大学航空部が頻繁に合宿している。18年の着陸回数は、福井空港全体の2930回のうち、グライダーは半数近い1425回に達した。

 東海や関西の大学航空部は福井空港のほか、愛知県や岐阜県の河川敷に整備された滑空場で訓練している。ピュアグライダーは、滑空場ではウインチ、空港では小型機でえい航して浮上させる。関西大学体育会航空部の松本正身監督(63)によると、ウインチえい航では高度400メートルくらいまでしか上げられないが、小型機では高度を自由に設定できる強みがあり、世界的には航空機によるえい航が主流だという。

 福井空港を利用する際には、滑空場とは違い管制官との連絡が必要になるものの、飛来する小型機やヘリなどの動きが分かり、安全性は高まる。利用の際に求められる書類提出も学生には「良い教材」(松本監督)。40年前にはあった定期便が離着陸する間の待機時間も今はなく、関係者からは「グライダー天国」との声が聞かれる。

 グライダーが、ひっきりなしに離着陸を繰り返す大規模な競技会も定期便がないため、開催可能だ。6月には40年以上の歴史を誇る関西大学と関西学院大学による「関関対抗グライダー競技会」が開かれた。エントリーした部員からは「福井空港ならではの航空機えい航での大会なので、非常に楽しみ」(関西大学3年女子)といった声があった。

 最適な環境を提供できる福井空港で経験を積みながら空の世界に夢とロマンを追う学生たち。OBの多くは航空会社や自衛隊のパイロットとして羽ばたいているという。

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